ニュースのポイント
IT大手のディー・エヌ・エー(DeNA)は、健康・医療情報サイトの「WELQ(ウェルク)」に続き、インテリア情報の「iemo(イエモ)」=写真=など8つのサイトの公開を中止しました。DeNAが公開していた10サイトのうち9サイトが非公開となったことになります。非公開となったサイトは、誰もが投稿できるとしていたのに、実は外部のライターが検索上位に来るような書き方で書いていました。しかも、内容に誤りや転用が数多くあると他のネットメディアなどから批判されていました。今、ネット上には
キュレーションサイトと呼ばれるまとめサイトがたくさんありますが、内容に責任を持っていないサイトもあります。みなさんは就活のためにネットで情報収集したりニュースを読んだりするでしょうが、信頼できるメディアのサイトに接触するようにしましょう。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色 清)
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「DeNA 非公開9サイトに 記事への関与問題視」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
二つの問題
DeNAのサイトの問題は二つあります。ひとつは、不正確な情報が多くあると指摘されたことです。誰でも投稿できるサイトであることをうたい、サイト側は責任を負わないとしていましたので、不正確な情報が載ることも織り込み済みだったのでしょう。ただ、WELQのような医療・健康情報サイトに不正確だったり誤っていたりする情報が掲載されているのは、深刻な問題を引き起こす恐れがあります。もうひとつ問題なのは、実際は一般の人の投稿で埋められていなかったことです。検索で上位に表示されるような書き方をする記事をそろえるため、有償で多くの外部のライターに依頼していました。外部のライターは、医学の専門ライターではなかったようで、サイト側がテーマや他サイトの記事の引用の仕方や文字数などを指南して書かせていたといいます。こういうやり方の場合は、間違いなく内容の責任はサイト側にあるはずです。DeNAもこうした手法自体に問題があることを認め、医学・健康情報のサイトだけでなく、ほかのジャンルのサイトも非公開にしたのです。
内容よりお金儲け
どうしてこうした無責任な手法がとられたのでしょう。それは、低コストでアクセス数を増やそうとしたためです。他サイトの記事を無断引用すればコストは少なくて済みます。ただ、無断引用とばれるといけないので、最小限の書きかえをしていたことが他メディアなどから指摘されています。サイトの収入はアクセス数に基づく広告収入です。アクセス数を増やさなければなりません。そこで、検索上位に来るようなテーマや書き方や文字数を外部ライターに指南して書かせていたようです。ちょっときつい表現ですが、このサイトは、お金を儲けることができれば内容はどうでもいいと考えていたと指摘されても仕方がないでしょう。
情報源を気にかけよう
こうしたサイトは責任ある「メディア」の倫理を逸脱していると私は思います。不特定多数の人が接触して、情報を信じる人が多いものだと思うからです。内容に責任を負わないということを、どこまで主張できるのでしょうか。実は、フェイスブック社が流したニュースについて、フェイスブック社側に責任があるのかどうか、論争になっています。私は基本的に「メディアは掲載している情報に責任を負うべきだ」と思います。
大学生はメディアについて知るべきです。ニュースを取材しているのは、基本的に新聞やテレビの既存メディアの記者です。ネットメディアの多くは取材記者を持っていません。既存メディアのニュースを引っ張ってきて流したり、専門家やライターの寄稿を掲載したりしています。中には、質より量とばかりにネット上の情報をちょっと加工するだけでオリジナルの記事のように見せかけるものもあります。ネットで情報を取る場合は、その情報のソース(源)はどこかを常に気にかけていましょう。ソースの分からない情報や信頼できる情報源でない場合は、うのみにせず、別のメディアでも確認するようにしましょう。
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