ニュースのポイント
広告大手の電通で起きた新入社員の過労自殺をきっかけに、どうしたら長時間労働を減らし、過労死をなくせるのかの議論が続いています。広告業界の構造的な問題を指摘する声もある中、様々な業界で長時間労働是正への取り組みも始まっています。(編集長・木之本敬介)今日取り上げるのは、オピニオン面(15面)の「オピニオン&フォーラム/耕論/過労をなくすには/『お客様は神様』変えよう/やりがいに潜む滅私奉公/『いま』からちょっと離れて」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
元博報堂社員でネットニュース編集者の中川淳一郎さんは今日の記事で、広告業界全体の構造的な問題を指摘しました。
広告業界は「お客様は神様」という文化が染みついていて、クライアントにいかに気に入られるかがすべてで、クライアントからぎりぎりにちょっとした修正を求められても断れないと言います。
「大手広告会社は、給料もいいし、社会的地位も高く、モテます。でも、むしろブラック企業と社会から認定されたほうがいいと思う。そうすれば『どうすれば長時間労働を減らせるか』などと、現実的な話になる」
さらに、広告業界の下請け企業の過酷な実態にも目を向けるべきだと主張します。
「大手に比べて下請けは給料が低く、労働時間はもっと長いのが普通です」「長時間労働を、電通の問題だとクローズアップすると、業界のいちばんブラックな部分が覆い隠されてしまいます」
長く業界に関わっている人の話ですから、実態の一面なのだと思います。中川さんは「お客様は神様」という意識と下請けの過酷さの改善を訴えます。
そんな中、いずれの表にも載っている飲食サービス業では、営業時間を減らしたり、休日を増やしたりする動きが広がっています。「業界研究ニュース」の「人手不足が生む外食や小売の営業時間短縮」では、ロイヤルホスト、マクドナルドなど外食業界の営業時間短縮の動きを取り上げました。読んでみてください。
ロイヤルホールディングスの黒須康宏社長は、朝日新聞のインタビューに「従業員に幸せな人生を送ってもらうためにも、長時間労働ではなく、余暇が取れる環境を整えなくてはならない。そのために、営業時間の見直しに取り組んでいる。来年1月までに、ロイヤルホストで24時間営業の店舗はゼロになる」と語っています。ほかにも、DMG森精機、三井物産、鹿島建設の社長が長時間労働是正への取り組みを語っています(主要100社景気アンケート)。
今年の正月には、百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングスが首都圏の伊勢丹、三越の計8店舗で元日と2日を休みにして、3日を「初売り」にしました。従業員らの負担軽減のためです。営業時間も短縮しています。顧客からのクレームもなく、1月2日の売り上げが8店舗でゼロになったにもかかわらず、1月全体の売り上げも前年同月比でプラスだったそうです。
行き過ぎた「お客様は神様」を見直すべき時代になったのかもしれません。業界によっても、会社によっても、長時間労働に対する取り組みや働き方は異なります。「電通に強制捜査…『働き方』で会社を選ぶには?」(11月8日の今日の朝刊)でも書きましたが、OB・OG訪問などで直接社員の話を聞いてみることが大切です。
※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから。
2024/12/04 更新
※就活割に申し込むと、月額2000円(通常3800円)で朝日新聞デジタルが読めます。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10