2016年11月17日

バルサの胸に「楽天」…スポンサー企業の戦略考えよう

テーマ:スポーツ

ニュースのポイント

 通販大手の楽天が、来季からサッカーのスペイン1部FCバルセロナ(愛称バルサ)のメインスポンサーになります。4年で総額2億2000万ユーロ(約257億円)の大型契約です。メッシ、ネイマールらスター選手を擁するバルセロナは世界的な人気チーム。楽天の世界戦略が見えてきます。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、社会面(39面)の「バルサの胸に『楽天』 257億円 スポンサー契約」とスポーツ面(23面)「楽天 世界へブランド戦略/バルサの発信力 知名度向上狙う」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
(写真は楽天の三木谷浩史会長)

狙いは世界のブランド力

 FCバルセロナは、スペインリーグ優勝24回、欧州ナンバーワンを決めるUEFAチャンピオンズリーグ優勝5回の名門クラブ。ソシオと呼ばれるクラブ会員が世界に約14万5000人、フェイスブックやツイッターなどソーシャルメディアのフォロワーは全世界で2億人超といわれます。楽天の三木谷浩史会長は「日本でもアジアでも米国でも一番人気があるのがバルセロナ」と語るほどでブランド力は絶大です。

 来年から、メッシやネイマール、スアレスのゴールシーンがスポーツニュースで流れるたびに、世界の視聴者の目にユニホームの「RAKUTEN」の文字が目に入ることになります。
(写真は、ゴールを決めて喜ぶメッシ=中央=とスアレス=左、胸の文字は現在のスポンサー「カタール航空」)

「脱・日本企業」に苦戦

 今年創立20年目を迎えた楽天は、Jリーグのヴィッセル神戸と、プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスを運営していますが、国内だけでは飽き足らない事情があります。

 楽天は2010年に「脱・日本企業」を宣言し、英語を社内公用語にしましたが、海外での売り上げは伸び悩んでいます。2015年の売上高でも、7135億円の8割を国内が占めました。今年になって、思うように浸透できなかった東南アジアや、英国など欧州の一部から撤退し、好調なドイツ、フランス、台湾などに特化する方針を打ち出したほどです。

 そこで今回の契約です。海外での知名度向上が課題の楽天にとって、バルセロナは絶好のパートナーというわけです。三木谷会長は東洋経済オンラインのインタビューで「楽天にとっては『日本の楽天』から『世界の楽天』に飛躍する大きなチャンス」と語っています。

昔は家電、いまIT

 欧州サッカーの強豪クラブの「胸スポンサー」になるのは、楽天が初めてではありません。日本代表の香川真司がかつて所属したマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)の初代胸スポンサーはシャープでした。ほかにも、日立、JVC、ソニー、パナソニック、NEC、OKIなど、グローバル戦略を進めていた家電メーカーが競うように有名クラブのスポンサーになりました。しかし今は、横浜ゴムがチェルシー(イングランド)とスポンサー契約を結んでいるくらい。今回の楽天の巨額投資は、その後の家電メーカーの苦戦とIT企業の成長という時代の流れも感じさせます。

めざすは「世界一」

 人気企業の採用担当者への編集長インタビュー「人事のホンネ」に掲載した40社超の中で、積極的に「目標世界一」を唱えた会社が2社あります。一つが楽天で、井上悠さんは「『世界一のインターネット・サービス企業になる』という目標を掲げていて、この企業理念に本気で共感しコミットしてくれる人を探しています。社内公用語を英語にしたのもこの目標のためですから」と語っています。

 もう一社が、「私たちは世界一を目指していて、世界80億人全員にモノを届けるところまでやりきろうと思っています」(中西一統さん)と述べたファーストリテイリング。こちらは、テニス世界ランク1位のジョコビッチ(セルビア)と錦織圭のスポンサーですね。アパレル企業らしくユニホームを提供して世界の消費者にアピールしています。

 国内外でスポーツ関連のスポンサーをしている企業がたくさんあります。どんなスポーツでどんな層にアピールしようとしているのか。これも立派な企業研究です。

 「人事のホンネ 2018シーズン」がスタートしました。第一弾は建設機械の世界的メーカー、コマツです。ぜひ読んでみてください。
(写真は、ジョコビッチとファストリの柳井正社長=2012年撮影)

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