2016年11月18日

マツダ、米国でEV販売へ トヨタが協力、環境規制強化に対応

テーマ:経済

ニュースのポイント

 マツダは、2019年にアメリカで電気自動車(EV)の販売を始めます。トヨタ自動車も2020年をメドにカローラ級の中型車のEVの販売を始める方針です。トヨタやマツダはこれまでハイブリッド車
や従来型のガソリンエンジンの改良で環境規制の時代を乗り切ろうとしていましたが、ここにきてEVに舵を切りはじめました。アメリカの環境規制が一段と厳しくなり始めたのと、自動運転時代にはEVが適しているとの考えが強まってきたためです。ただ、EVは部品数が少なく、電池の性能によるところが大きいため、新しい参入者があらわれやすく、自動車メーカーにとっては諸刃の剣となります。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色 清)

 今回取り上げるのは、8面の「マツダ、EV販売2019年 トヨタ協力米国内で」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

(写真は、11月16日にロサンゼルスでマツダのスポーツ多目的車、新型「CX-5」を発表する丸本明副社長。北米市場では同社初のクリーンディーゼルエンジン搭載車)

カリフォルニアの規制で舵切り

 世界の自動車メーカーは、従来のガソリン車でないクルマの開発に力を入れています。地球環境問題により、二酸化炭素の排出を減らす必要に迫られているためです。その対応としては、①従来のガソリンエンジンの改良②ハイブリッド車(HV)③プラグインハイブリッド車(PHV)④燃料電池車(FCV)⑤電気自動車(EV)があります。マツダは、企業規模が小さいため開発にかけられるお金が少なく、これまではガソリンエンジンの改良で乗り切ろうとしていました。ただ、18年モデルからカリフォルニア州が排ガスの全く出ないクルマ(ZEV=ゼブ)を一定割合以上売らないといけないという規制を打ち出しました。カリフォルニアはアメリカで人口が最も多い州で、移動手段は自動車です。マツダは、対応せざるをえなくなって、提携先のトヨタの協力を得てEV開発に踏み出しました。

EVへの流れが出てきた

 実はトヨタも最近までEVには消極的でした。HVあるいはPHVでいけるところまでいき、その先はFCVでいこうとしているとみられていました。ただ、ZEVを売らないといけないとなると、HVでは乗り切れません。PHVはZEVにカウントされますが、あくまで過渡期の技術です。FCVは、触媒に白金(プラチナ)を使うためどうしても値段が高くなるという欠点を克服できていません。ということで、トヨタもEVの開発に乗り出したわけです。ホンダはまだEV宣言をしていませんが、そのうちEVに乗り出すだろうとみられています。これまで日本のEVは日産自動車と三菱自動車の2社だけが奮闘していましたが、ここにきてどうもEVへの流れができているような感じです。

自動運転もEVの追い風に

 EVへの流れの理由は、3つくらいありそうです。ひとつはカリフォルニアのような環境規制強化です。もうひとつは、電池の性能が上がって、1回の充電で走れる距離が伸びてきたことです。300km台が射程に入ってきました。3つめは、思ったより早く自動運転時代が来そうなことです。電気でコントロールする自動運転には、駆動エネルギーも電気のほうがいいとされるようになりました。反応がスムーズになるからです。このため、これまで走行距離の短さや充電時間の長さから敬遠していたメーカーもEVに向かい始めたようです。

本当の激変は2020年代

 自動車メーカーがEVに積極的でなかった理由をもうひとつ付け加えれば、EVは電池さえ開発できれば、作るのは簡単だということがあります。プラモデルのクルマと同じで、基本は電池とモーターと車軸と車輪と車体があればいいのです。アメリカでは、テスラ・モーターズというベンチャーがEVの先頭を走っています。グーグルは自動運転時代には業界を主導しようとしています。つまり、EV時代が来ると、熟練労働のかたまりであったガソリンエンジン車時代のように既存の自動車メーカーが安閑とはしていられなくなるのです。自動車業界の本当の激変は2020年代だと思います。自動車業界を志望している就活生は、就職すればまもなく、自動車がこの世に登場して以来100数十年ぶりの大変化に遭遇するのではないでしょうか。覚悟をもっていてください。

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