2016年11月04日

きょう発効!「パリ協定」をやさしく解説

テーマ:環境・エネルギー

ニュースのポイント

 地球温暖化対策の新たな国際ルール「パリ協定」が4日、発効しました。産業革命からの気温上昇を2度より低く抑えるため、二酸化炭素(CO₂)などの温室効果ガス排出を今世紀後半に実質ゼロにすることを目指します。ただ、日本はまだ協定を締結しておらず、世界の動きに対して出遅れてしまいました。7日からモロッコで締約国会議が開かれ、詳しいルール作りが話し合われますが、日本は参加できず、各国の動きを読み間違えた失態といっていいでしょう。パリ協定の内容と日本の対応をやさしく解説します。(朝日新聞社教育コーディネーター・一色 清)


 今日取り上げるのは、1面の「パリ協定きょう発効 排出ゼロへ新ルール 温暖化対策 日本、世界へ逆行」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。総合面(2面)の「時時刻刻・脱炭素 挑む世界」、「いちからわかる!温暖化を防ぐためのパリ協定って?」も関連記事です。

「パリ協定」って何?

 世界のエネルギー需要が増えるのに伴い、二酸化炭素などの温室効果ガスが増えています。温室効果ガスは、文字どおり地球を取り巻いて地球を温室のようにします。地球温暖化といわれる現象です。温度が上がり、氷が溶け、標高の低い島は海に没する恐れが出ています。ほかにも、気候が荒々しくなって被害が大きくなったり、農作物の適地が変わったりする問題も起きています。このため、世界各国が力を合わせて二酸化炭素の排出量を抑える約束をしようとしています。1997年に京都の会議で「京都議定書」がまとまりました。しかし、この議定書にはアメリカが参加せず、中国も新興国扱いで削減の義務がありませんでした。この京都議定書に代わる約束が、昨年パリで開かれたCOP21で決まった「パリ協定」です。すでにアメリカ、中国を含む94の国・地域が協定を締結し、4日発効しました。

写真は、木槌を打ってパリ協定の採択を宣言するCOP21のファビウス議長(右から2人目)です。

どんな内容なの?

 パリ協定は産業革命前に比べて気温の上昇を2度より低く抑えるのが目標です。石油や石炭といった化石燃料を燃やす量を減らし、省エネ技術を高め、二酸化炭素の排出量を減らします。加えて、大規模な植林をして、吸収を増やすことで今世紀後半には排出を実質ゼロにするという計画です。国ごとに排出量の削減目標があり、日本は2030年度に2013年度に比べて26%減らす目標にしています。

どうして日本は締結が遅れているの?

 日本の締結が遅れた理由は、スピードの読み間違いにあるようです。パリ協定がまとまったのは、昨年12月。発効の条件は、総排出量の55%以上を占める55カ国以上が締結するということでした。日本政府は、京都議定書には参加しなかったアメリカや今回初めて厳しい削減目標を提出した中国は、ぐずぐずしてなかなか締結しないだろうとみていたようです。ところが、アメリカと中国が仲良く9月に同時に締結、インドやEU加盟国なども続きました。政府は、国会審議の優先順位をTPPなどよりも後回しにしていたため、4日に発効することが分かってあわてても遅かったというわけです。背景には、欧米の国などは「二酸化炭素の排出量削減は新しいビジネスが生まれるチャンス」ととらえて前のめりなのに対し、日本は「排出量削減は経済にマイナス」ととらえているという違いがあるようです。

志望企業の対応を調べよう

 靴のセールスマンが2人、はだしの国に行き、1人は「これじゃ靴は売れない」とがっかりし、もう1人は「これならいくらでも売れる」と喜んだという話があります。どちらが優秀なセールスマンか分かりますよね。後者です。ビジネスチャンスは、変化があれば生まれます。それが自由な経済活動に手かせ足かせをはめるモノだったとしても、変化です。「パリ協定」の場合で言えば、既存の火力発電や鉄鋼生産などにはマイナスでしょうが、再生可能エネルギー蓄電池、様々な省エネ技術などには膨大な新しい需要が生まれます。地球温暖化対策は長い取り組みになります。就活生は、志望企業が地球温暖化対策に前向きなのか後ろ向きなのか、調べてみることをお勧めします。

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