2016年11月01日

海運3社の事業再編に学ぶ業界最新事情

テーマ:経済

ニュースのポイント

 海運業界のトップ3、日本郵船、商船三井、川崎汽船が、主力のコンテナ船事業を統合すると発表しました。海運不況が続いているためで、3社合わせたコンテナ船事業の規模は世界6位になります。海運は経済を支える基幹インフラ事業。ニュースから業界の最新事情を学びましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(9面)の「海運3社、コンテナ船事業統合/船余り深刻 採算悪化/再編 海外で相次ぐ/ばら積み船も需要低迷」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
(写真はコンテナ船=日本郵船提供)

「船余り」と世界経済停滞で…

 海運は古来、大量・長距離輸送の要です。とくに海に囲まれた日本では、海外から資源や食料を国内へ、国産の工業製品等を海外へ運び、経済を支えています。ただ、世界の経済状況に左右されやすい業界で、航空機による空輸が拡大してきたこともあり、戦後、何度か再編が起きてきました。1964年に大手6社、1989年に5社、1999年に今の大手3社にまとまりました。

 数年前の海運好況時に船が大量に発注され、世界的に荷物の量に比べて船が多すぎる「船余り」の状況が続いています。加えて、中国など新興国の経済成長の減速などで世界の貿易は伸び悩んでおり、今は「史上最悪」とも言われる海運不況にあります。

コンテナ船で世界6位に

 そこで起きたのが今回のコンテナ船事業の統合です。コンテナ船は、食品、日用品、機械部品などをコンテナに積む船で、トラックや鉄道に積み替えて内陸に運びます。大手3社のコンテナ船事業は、売上高の3~5割を占める主力事業ですが、運賃が下がって採算割れで運ぶ例も増えています。10月31日に発表された2016年中間決算の純損益は、日本郵船、川崎汽船の2社が赤字。海外では、コンテナ船事業で規模拡大をめざす再編が進んでおり、国内3社も対応を迫られていました。

 2017年7月に共同出資会社をつくり、2018年4月から事業を始めます。3社のコンテナ事業の年間売上高を合わせると2兆円を超え、世界6位になりますが、それでも世界シェアは7%です。

今後に注目

 大手3社にとって、コンテナ船と並ぶ事業の柱は、鉱物資源や穀物などを運ぶばら積み船で、売上高の2割ほどを占めます。このほか、原油タンカー、自動車運搬船、LNG(液化天然ガス)船などがあります。今後は、シェールガスの輸送が増えることを見越してLNG船に力を入れたり、海洋資源開発などの新規事業に取り組んだりするとみられます。

 31日の3社社長の記者会見では、コンテナ船以外の事業統合については否定しましたが、長期的には、さらなる再編の可能性もあるかもしれません。今後を注視する必要があります。

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