ニュースのポイント
リオデジャネイロ・パラリンピックが閉幕しました。様々な障害を克服して超人的な記録を競う選手の姿に感動したり、元気をもらったりした人も多いでしょう。次回の東京パラリンピックに向けて障害者スポーツはさらに盛り上がりそうですが、この機会に障害者の雇用について考えてみます。なぜなら、障害者の雇用に積極的な会社は、社員を大事にする会社ともいえるからです。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、1面トップの「リオ 充実のフィナーレ/閉会式『とても幸せ。次は東京に来て』」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)など、各面に掲載されているパラリンピック関連の記事です。(写真は、閉会式を楽しむ日本の選手たち)
法定雇用率は2%
日本の企業は、「障害者雇用促進法」で障害者を雇用することが義務づけられています。障害者が働いて自立できる社会とするのが目的です。社員に占める割合の目標「法定雇用率」は従業員50人以上の会社で2.0%以上。未達成企業は足りない1人につき月5万円を国に納めなければなりません。障害者雇用の態勢を整えた「特例子会社」で雇った場合も親会社に合算できます。今年4月からは、募集や賃金、配置、昇進などでの障害者の差別を禁止し、車いすの利用者に合わせて机の高さを調整したり知的障害を持つ人に分かりやすい文書や図で仕事を説明したり、支障を改善するための「合理的配慮」も新たに義務づけられました。2018年4月からは障害者の範囲に、これまでの身体障害者、知的障害者に、そううつ病や統合失調症などの精神障害者が加わります。
法定雇用率は、すべての働き手に占める障害者の割合(求職中の人を含む)から計算するので、障害者の範囲が広がれば雇用率は上がり、企業が雇うべき障害者の数は増えることになります。
(写真は、リオ・パラリンピックの女子マラソン車いす)
障害者雇用率ランキング
9月は「障害者雇用支援月間」で、東洋経済新報社が毎年この時期に
「障害者雇用率ランキングトップ100」を公表しています。今年の発表はまだなので昨年のものを見てみましょう。同社の「CSR企業総覧」2015年版から、2013年度に障害者を5人以上雇用している843社を対象としたランキングです。
ランキングによると、1位は食品トレーや弁当・総菜容器最大手のエフピコ(本社・広島県福山市)で、16.00%(372人)と他社を引き離しています。全国23事業所で障害者を雇用しています。2位はエンジニア派遣業のアイエスエフネット(東京港区)で11.52%(335人)。「会社は社会の縮図であるべき」との考えから、性別、障害の有無、国籍など社員の割合を社会と同じにすることを目標に掲げています。3位は不動産業のヒューリック(東京中央区)で6.92%(11人)でした。
有名企業では、5位・エイベックス・グループ・ホールディングス(5.92%、20人)、8位・ツムラ(3.75%、104人)、9位・良品計画(3.57%、170人)がトップ10に入りました。以下、資生堂、千葉銀行、サッポロホールディングス、ユニチカ、ソニーなどが50位内に名を連ねました。
(写真は、男子走り幅跳びで銀メダルを獲得した山本篤選手)
ダイバーシティーの時代に対応
障害者に優しい会社の多くは社員に優しい会社だと思います。多様性(ダイバーシティー)が重視される時代ですから、時代に合わせて社会の変化に対応力がある会社である可能性も高いかもしれません。就活では、障害のある人はもちろんよく調べなければなりませんが、健常者も業界・企業研究の際にこんな視点から調べてみることをお勧めします。
2%といえば50人に1人。これからはもっと割合が増えるでしょう。私の職場にも障害をもつ社員がいますし、社内でも多くの障害者がそれぞれの得意分野でできる仕事を自然にこなしています。キユーピーの子会社やコマツの人事部など、障害者が多く働く職場での工夫などを紹介した記事が4月の経済面「けいざい+ 障害者と就労」に載りました。こちらも読んでみてください。
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