2016年08月03日

紙の雑誌から電子雑誌へ ITスキルも必要?

テーマ:メディア

ニュースのポイント

 紙の雑誌の売り上げが減る一方で、電子雑誌が伸びています。雑誌のブランド力を生かしたネット通販で稼ぐ会社もあります。紙だけでやっていくのは難しい時代。各出版社は生き残りをかけてそれぞれ工夫しています。紙と電子では何が変わるのでしょうか。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、文化・文芸面(36面)の「雑誌の今㊤ 苦境の『紙』 ネットへ軸足/ブランドに吸引力 通販好調」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

紙の雑誌販売額はピークの半分

 記事によると、紙の雑誌の販売額はピークだった1997年から半減し、販売部数は1995年の4割を切りました。「ニコニコ動画」を運営するドワンゴと経営統合したKADOKAWAでは、編集者がIT技術者認定試験を受け、合格すれば1年間「準エンジニア手当」が支給されます。同社は「編集者が直接様々なメディア展開を考えたり、コンテンツ作りをしたりする必要がある」と説明。編集者にはITのスキルも必要な時代になったようです。
 月額400円(税抜き)で雑誌160誌以上が読み放題の「dマガジン」(NTTドコモ)の会員は2年で300万人を突破しました。閲覧数に応じて出版社に収入の一部が入る仕組みです。紙の週刊誌の2015年の販売額は前年より13.6%の大幅減となる一方、電子雑誌全体の販売額は前年比78.6%増の125億円を記録しました。
 「婦人画報」を発行するハースト婦人画報社は6年連続の増収増益。伸びているのはデジタル事業で、雑誌を核としたネット通販事業が好調です。雑誌のイメージに合ったデザインの服や靴、アクセサリーなどを大手百貨店から仕入れますが、同社は「雑誌のブランド力」を成功の理由に挙げます。(写真は同社のライフスタイル誌「エル・ジャポン」と通販サイト「エル・ショップ」の会議)

紙とデジタル、どう違う?

 今日の記事から、紙とWEBの雑誌の違いを考えてみましょう。
 2015年の雑誌の販売額が8000億円弱だったのに対し、電子雑誌は伸びたといっても125億円。ケタが違います。紙の販売減を補うにはほど遠い金額です。紙の雑誌は紙やインクなど製作に高いコストがかかるぶん高く売ることができますが、電子雑誌はコストがあまりかからない一方、紙のような価格を付けることはできません。
 また、講談社のサッカーサイトについて同社は「コストがかからないので新しいことに挑戦しやすい」と言っています。紙の雑誌よりも斬新な企画が出てきそうですね。

変わらないことも…

 変わらないこともあります。「dマガジン」でよく読まれる記事についてKADOKAWAは「週刊誌のゴシップ系は男女とも人気がある」と話しています。WEB時代になっても、読者が求めるニュースの中身が急に大きく変わるわけではないようです。紙からWEBに媒体が変わっても、週刊誌の記者が取材して記事を書くところまでは昔も今も同じ。アナログな作業です。読者が関心をもつ情報を届けるという出版社の役割や意義も変わりません。
 ただ、その先の読者への情報の届け方が進化したため、これからの記者や編集者にはIT系の資質も求められるようになったわけですね。メディアを目指す人は、こうした記事から自分が実際に仕事に関わる姿を想像してみてください。志望動機につながります。
 今日の社会面(38面)には「アマゾンの読み放題 きょう開始/電子書籍 月額980円、和書は12万冊」も載っています。読んでみてください。

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