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NHKの朝ドラ「マッサン」をきっかけに人気が出た国産ウイスキーの原酒不足が続いています。ウイスキーづくりには年月がかかり、すぐには出荷を増やせないため、売りたくても売れない状態です。でも、サントリー、アサヒ、キリンの大手3社は、逆にここぞとばかりに海外産の品ぞろえ強化や、新たなハイボールの売り込みなどで売り上げを伸ばしています。「品薄こそ商機」という力強い戦略を見ることができます。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(8面)の「国産ウイスキー人気 原酒品薄/各社、海外産品ぞろえ強化」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
国産が出せないなら海外産を売り込め!
各社の取り組みをまとめます。
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サントリーホールディングス(HD) 2014年に買収して子会社になったビームサントリー社の
バーボン「ジムビーム」の販売に注力。今年の販売計画は前年比34%増の55万ケース。ウイスキーなどアルコール度数の高い蒸留酒を扱うサントリースピリッツは東京・三田にバ-をオープンし、スコッチ、アイリッシュ、ジャパニーズ、アメリカン、カナディアンなど世界の5大ウイスキーが飲み比べられるようにした(写真上)。
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アサヒビール 「10年もの」などの高級ウイスキーは出荷を急に増やせないため、様々な熟成年数のものをブレンドしたウイスキーの販売に力を入れる。「ブラックニッカ」では氷点下に冷やした「フリージングハイボール」(写真)が人気。業務用のたる詰めの販売数は1~6月で前年比2倍超。バーボンの米ブランド「ジャックダニエル」も同14%増。
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キリンビール 8月にスコッチウイスキー「ジョニーウォーカー グリーンラベル 15年」を売り出す。「ジョニーウォーカー」「ホワイトホース」の主要ブランドの1~6月の販売数は前年比2ケタ増。2020年までに2倍の販売をめざす。
そもそもサントリーがつくった「ハイボールブーム」
ハイボールはウイスキーのソーダ割り。飲み会では「とりあえずビール」が定番ですが、最初からハイボールを頼むのも当たり前の光景になりました。昔からあった飲み方ですが、今のハイボールブームをつくったのはサントリーです。ウイスキー市場は1983年をピークに急激に縮小し、2007年の販売量は6分の1まで落ち込みました。そこで、サントリーは2008年、「ハイボール復活プロジェクト」を仕掛けました。若者に「角瓶」をビール感覚で飲んでもらおうと、試行錯誤の末に「角ジョッキ」を開発。割り方や氷の量などにこだわり、2009年から大ヒットしました。メーカーが仕掛けたブームの好例です。
欠かせない企業研究
こうした企業の具体的な取り組みからは、時代状況や消費者の嗜好(しこう)の変化を探ったうえで、売り上げ増をはかる各社の戦略が見えてきます。ときには、「ハイボール復活プロジェクト」のように、「時代をつくる」ほどの大ブームを生み出すことも。同プロジェクトについては、サントリーHDの採用ホームページで紹介されています。新聞記事や各社のHPなどで具体例を知ると、仕事のイメージも少し湧いてきます。欠かせない企業研究ですよ。
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