2016年06月23日

参院選きほんのき② 「アベノミクス」成功?失敗?

テーマ:政治

ニュースのポイント

 参院選が始まりました。「きほんのき」の2回目は、大きな争点の一つ「アベノミクス」です。安倍晋三首相は成果を強調し、野党は格差が拡大したとこき下ろします。いったい成功なの?失敗なの? 論点をわかりやすく整理します。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、総合面(3面)の「首相、改憲主張を〝封印〟/アベノミクス 停滞感」のうち、アベノミクスに関する部分です。
 記事の内容は――アベノミクスをめぐり与党は「成果」を強調し、野党は「失敗」と断じる。アベノミクスの3年半で日本の景気はどうなったのか。過去最大の金融緩和の効果で、当初は円安と株高が進み大企業を中心に業績が改善。賃金の底上げも続いた。有効求人倍率は今年4月に1.34倍となり、バブル期直後並みの高水準に。ただ、人手不足には少子高齢化の影響で求職者数が減っている事情が。非正規社員の伸び率が正社員を上回るなど雇用の「質」の改善も進んでいない。物価上昇に賃金の伸びが追いつかず、消費税率を8%に上げた影響もあり、個人消費は低迷が続く。日経平均株価は年明けから下落傾向。1ドル=120円台だった為替も104円台まで急速に円高が進むなど、「停滞感」を強めている。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 アベノミクスは安倍政権の経済政策で、「アベ」と「エコノミクス」を合わせた造語。①大胆な金融緩和 ②機動的な財政出動 ③規制緩和などによる成長戦略――を「3本の矢」として持続的な経済成長を目指しています。
 目指す「経済の好循環」は、こんなイメージです。
 金融緩和(日本銀行が金融機関から国債を買うなどして市場に流通するお金の量を増やし金利を下げる)→円の価値が下がって円安に→輸出コストが下がって日本に多い輸出型メーカーの業績アップ→日本企業の株価が上がって投資家の収入増、円安でもうけた企業が賃上げ→国内の消費が増える→モノが売れて企業の業績がさらに上がる
 
 「円安・株高」を入り口に本格的な成長につなげる政策だとわかります。では、この3年半、実際にはどうだったか。を見てください。円相場は一時125円台まで円安になって輸出が増え、日経平均株価は2万円台に。円安・株高という輸出企業にとって有利な状況が続き、大手を中心に史上最高の利益を上げる企業が多く出ました。ところが今年に入って状況は一変。中国など新興国経済の減速を契機に流れは円高に変わり、今は1ドル104円台。これにともなって日経平均株価も1万5000~1万6000円台に下がりました。今年度の大手企業の業績は、前年度より悪くなるところが多そうです。そもそも中小企業には、アベノミクスの恩恵は行き渡っていないと言われています。

 有効求人倍率は、わかりやすく言うと「仕事を求める人が座る椅子がいくつあるか」。1人に0.8個しかなかった椅子が今は1個以上ありますから、かなり良くなりました。でも、記事にあるように非正規社員が増え、働く人の4割を超えています。賃金は上がりましたが、物価も上がったため家庭が使えるお金はむしろ減りました。アベノミクスで、大手と中小、都市と地方、世代間などの「格差」が広がったという指摘もあります。安倍首相は「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」と言い、民進党の岡田克也代表は「アベノミクスはすでに限界」「経済成長がすべてみたいな形で格差が広がり、生活が壊されている」と訴えます。

 朝日新聞が6月に実施した主要100社景気アンケートでは、アベノミクスについて「大いに評価」4社、「一定の評価」81社、「どちらともいえない」5社、「あまり評価できない」2社と、多くが評価しましたが、「アベノミクスの恩恵が中小企業や地方に行き渡る『トリクルダウン』が起きていると思うか」には「起きている」は0社、「十分ではないが起きている」26社、「あまり起きていない」48社、「全く起きていない」2社という回答でした。6月初めの朝日新聞の論調査で安倍内閣の経済政策の評価を尋ねると、「大いに」5%と「ある程度」50%を合わせて「評価する」は55%。「評価しない」は「あまり」33%、「まったく」8%を合わせて41%。大きく割れています。みなさんも、アベノミクスについて自分の立場からだけでなく、企業にとって、地元にとってどうなのかなど、多様な視点から考えてみてください。

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