2016年05月19日

東レ、ユニ・チャーム、花王…素材・生活用品メーカーが東南アジアで浸透

テーマ:経済

ニュースのポイント

 東レ、ユニ・チャーム、花王といった素材や生活用品を扱うメーカーの東南アジアへの進出が目立っています。日本で培った高い技術力に加えて、現地のニーズに応じた改良で浸透しています。こうした企業の最新ニュースは、面接で語れるネタになりますよ。(編集長・木之本敬介)(写真は、タイで売られる花王の「アタック」)

 今日取り上げるのは、経済面(9面)の「けいざい+新話/素材、アジアに活路㊥ 安心・清潔 ニーズを先取り」です。消費が伸びる東南アジアに活路を求める素材や生活用品メーカーに焦点を当てた連載記事の2回目です。
 記事の内容は――家庭用浄水器の普及率は、日本は約40%だが東南アジアでは3~5%。上下水道への信頼は高くなく、蛇口をひねれば飲める日本と違って水は買うのが「常識」だ。東レ代理店の名古屋システムナレッジは14年前からベトナム市場に挑んでいる。浄水器「トレビーノ」について、多くの人が「こんな小さな機器で水がきれいになるはずがない」と疑問を持つため、売り場で丁寧な説明をしても、始めの20個を売るのに数カ月かかった。それでも「子どもに安心なものを」と考える若い世代がいて、日本では消費者に任せている本体取り付けやカートリッジ交換も従業員らがこなして信頼を得た。2015年の売り上げは14年の3倍に。経済が成長すれば生活水準が上がり、消費者の志向は量から質に変わる。先取りで市場に入れば、その後の競争は有利になる。浄水器で東レと競う三菱レイヨンは2年前から美容効果を訴え、炭酸泉が出る装置をタイやベトナムの美容院に本格展開し始めた。花王は衣料用洗剤でニーズの先取りを始めた。2015年7月、タイで売る衣料用洗剤「アタック」を全面改良し、衣服に残ると臭う原因となる菌の繁殖を、洗濯後も長く押さえられる世界初の商品を発売。仕事を持つ女性が増え、帰宅後の夜に洗濯する機会が多くなっていた。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 日本は人口減少、少子高齢化で、多くの事業でかつてのような市場の拡大は望めません。このため、たくさんの企業が新たな市場を求めて海外に進出しています。中でも東南アジアはとくに注目です。東南アジア諸国連合(ASEAN)は、人口6億人を超える大きな経済圏で、今でも年に5%以上の経済成長を続けています。高度経済成長期の日本がそうであったように、国民の所得水準が上がるとともにさまざまな生活用品が普及し始めている段階にあります。

 ただ、国によって所得水準、生活習慣、文化などが異なるため、日本で売れている商品を同じ売り方で売ろうとしてもうまくいきません。今日の記事では、水道水を飲む習慣がないベトナムで、家庭用浄水器の普及に十数年取り組んできた東レの関連企業の取り組みが紹介されています。花王の洗剤も、タイ市場でのニーズに応じた商品改良をしてきました。

 連載1回目の昨日の記事では、インドネシアで紙おむつを売るメーカーの取り組みを紹介しました。
◆ユニ・チャームの「マミーポコ」 赤ちゃんが長時間動き回っても漏れないことが求められる日本仕様の紙おむつから、いらない機能や素材をそぎ落とし、半値の商品を開発。百貨店やスーパーだけでなく、庶民がよく使う小さな雑貨店「ワルン」に置く1枚売りの商品も。インドネシアで高級品だった紙おむつを中・低所得者に広げた。2007年に10億枚に届かなかった同国の市場は、いま約50億枚。同社が市場の6割を占め、現地法人の売上高は10倍に。同社は、売上高の6割が海外。インドネシアでは高級な男女別のマミーポコも投入。大人用おむつにも力を入れている。
◆花王の「メリーズ」 2014年にジャカルタ郊外に工場を建てユニ・チャームを追う。
◆大王製紙の「グーン」 今年3月、インドネシアの新工場から新製品の出荷開始。イスラム教徒が多いため、イスラムの戒律に沿った「ハラル」認証を取った。

 現地で6年間、開発や営業を担当したユニ・チャームの石井裕二さん(44)の経験からは、ニーズを探る地道な努力の大切さが伝わってきます。それまで「価値あるものを高く売るのが営業だ」と教わってきたためインドネシアでの仕事に始めは気乗りしなかった石井さんですが、マミーポコは高くて買えないという女性従業員の話に驚き、200軒以上の民家を訪ねておむつの使用実態を聞いて回りました。日本よりもおむつを取り換える頻度が高いことがわかり、機能を落としたインドネシア向けの商品開発につなげたのです。

 こうした記事を読むと、企業がめざす方向性に加えて、社員の苦労や工夫、努力といった働く姿が見えてきます。面接の場で、記事を読んで感じたことや「自分なら」という思いを込めて志望動機を語れたら、きっと印象に残りますよ。連載の最終回には、大手印刷会社が登場する予定です。

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