ニュースのポイント
今日取り上げるのは、1面の「エジプト機 テロの可能性/航空相見解 地中海で破片発見」です。
記事の内容は――地中海の上空で19日未明(日本時間同日朝)に消息を絶ったパリ発カイロ行きエジプト航空804便のエアバスA320型機(乗客56人、乗員10人)について、ギリシャ軍の船が同日、同国南部クレタ島の南数百キロの海上で、同機のものとみられる二つの大きな破片を見つけた。ロイター通信が同国国防省関係者の話として報じた。同機は墜落した可能性が高い。
今年の就職戦線の特徴の一つは、航空、旅行といった業界の人気が高いことです。学情の調査でも、1位が全日空、2位が日本航空で、上位にはJTBやH.I.S.などの旅行会社が入っています。確かに、見回せば外国人観光客がどんどん増えていますし、ビジネスでの外国との行き来も増えています。羽田空港への国際線の乗り入れは、航空会社による枠の取り合いになっています。ですから、こうした業界は業績もいいですし、新卒の採用も増やしています。仕事内容も、志望者にとってはどことなく知らない世界に連れて行ってくれそうで、夢があるように感じられるでしょう。
ただひとつだけ覚えておいてほしいのは、航空、旅行の業界は、業績があっという間に悪くなることがある業界だということです。最近では、2009年、2010年がそうでした。リーマンショックという世界的恐慌がおこり、航空会社のビジネス需要が激減しました。それに追い打ちをかけたのが、アジアでの新型インフルエンザの流行でした。ビジネス、観光客ともに減るダブルパンチとなり、全日空も日本航空も2年連続の赤字となりました。とりわけ海外比率の高かった日本航空の打撃は大きく、2010年にとうとう会社更生法を申請し倒産しました。
その前の大きな打撃は、2000年代初頭にありました。2001年9月11日にアメリカで同時多発テロがありました。テロリストに乗っ取られた航空機がワールドトレードセンターや米国防総省などに突っ込みました。その後、アフガン戦争、イラク戦争と、アメリカが「テロとの戦い」と主張する戦争に突入しました。世界の人々は、航空機に乗ることを躊躇するようになりました。このときも、感染する病気の流行が追い打ちをかけました。日本では一般的に「サーズ」と呼ばれた重症急性呼吸器症候群(SARS)でした。中国で流行し、日本でも流行しかねないと恐れられ、日中を結ぶ路線を中心に航空客が激減しました。このころ全日空、日本航空はともに赤字を計上しました。
1990年代は、湾岸戦争やバブル崩壊で苦しみましたし、1980年代は日本航空のジャンボ機が御巣鷹の尾根に墜落し、500人以上の命が失われるという大事故を起こしました。こうして振り返ると、少なくとも10年に一度は大きな出来事によって経営に大打撃を受けてきた業界なのです。
業界では、こうしたリスクを「イベントリスク」といっています。航空機事故の多くは航空会社の責任でしょうが、テロや経済恐慌、病気の流行などは外から持ち込まれる出来事(イベント)によって起こるリスクです。一航空会社だけではどうしようもない出来事によって、給料が減ったり、リストラにあったりするかもしれません。航空会社や旅行会社は、今後伸びていく業界で夢もある業界だと思いますが、イベントリスクもあることを知っておきましょう。
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2025/04/02 更新
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