ニュースのポイント
就活で「オヤカク」（親に確認）をする企業が増えています。学生に内定を出した企業が、親が納得するか確認したり、親に直接会って説明したりすることです。あなたは、行きたい会社への入社を親に反対されたらどうしますか？ 諦めますか？ どの会社に入るかの最後の決断は、親の意向に流されて決めてはいけません。自分が納得できる会社を自分で決めることがもっとも大切です。（編集長・木之本敬介）
今日取り上げるのは、社会面（34面）の「大学生の親 存在感どっしり／入社反対して子が辞退も／企業『オヤカク』流行」です。記事の前段は大学の入学式に親が出席するのが当たり前になったという話題。後段がオヤカクの話です。
記事の内容は――企業の新卒採用の現場で「オヤカク」が広がり始めている。企業が内定を出した学生に対し、親が納得するか確認を求めたり、親と会って採用理由を説明したりすることを言う。親に反対されて入社しないケースもあるためだ。動画マーケティング会社LOCUS（東京都）は学生の保護者に会社をよく知ってもらうために社長が「家庭訪問」している。人材会社ビースタイル（同）は社長名で保護者あてに手紙を送り、内定を出した理由を書き「ちゃんと育てます」と約束する。人事支援サービスのProFuture・HR総研が３月、「親対策」の有無を企業に尋ねると９％が「有り」と答えた。あいさつの電話、手紙や会社案内、自社製品の送付、家庭訪問などをしていた。
（東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から）
就活アドバイス
１年前のこの欄で「入社式に親も参加…就活で親に相談していますか？」（2015年４月22日）を書きました。入社式に新入社員の親を招く企業を取り上げた記事を紹介しましたが、「オヤカク」という言葉はまだあまり耳にしませんでした。学生有利の「売り手市場」の傾向がさらに強まったこともあり、昨夏の採用から企業に広がったようです。
親の反対で入社しないケースがあるために始まった「オヤカク」ですが、行きたい会社に行けないのは不幸なことです。親がみなさんの幸せを願っているのは間違いありません。ただ、その判断基準が時代錯誤だったり、自分の価値観の押しつけだったりすることはよくあることです。
出版社志望の女子学生から「父は賛成してくれているんですが、母は丸の内のＯＬになりなさいって言うんです」という相談を受けたことがあります。お母さんは大手企業を数年で退職して結婚。以来、専業主婦として幸せに過ごしてきたのでしょう。お母さんのことが大事だからこそ悩んでいました。でも、時代錯誤と価値観の押しつけの典型です。お父さんに相談しつつ、意志を貫くようアドバイスしました。
あなたが選んだのがオヤカクをする会社だったら、ラッキーかもしれません。オヤカクをするのは、あまり有名ではないけれど、絶対にあなたに来てほしい会社だからです。会社と協力して親を説得しましょう。オヤカクをしない会社への入社を親に反対されたら、自分で説得しなければなりません。でも、自分で納得して本当に入りたいと思った会社なら、自信を持って親に話しましょう。
逆に、もし親の意向を受け入れて、自分では納得していない会社に入社したらどうなると思いますか。どんな仕事でもしんどいことがたくさんあります。そんなとき踏ん張れるでしょうか。これぞミスマッチ。若年離職につながりかねません。自分で納得して決断していれば、たいていのことは乗り越えられます。就活は社会人の入り口です。自分の人生には自分で責任を持つ、その出発点です（３月30日の今日の朝刊「就活に『正解』なし！ 悩んで納得して決断しよう」も読んでみてください）。
一方で、今の就活は大変ですから親に頼らない手はありません。売り手市場とはいえ、たくさんの企業の採用試験を受けて、たくさん落ちるのが当たり前。一人で抱え込むには荷が重いのが今の就活です。ともに挑む友人も大事ですが、一番身近な社会人である親にも頼ってください。会社や業界、仕事の話を聞く、自分の長所を教えてもらう、志望する業界の社会人を紹介してもらう、エントリーシートを見てもらう、面接の練習相手になってもらう、スーツやカバンを買ってもらう、交通費を援助してもらう、愚痴を聞いてもらう……。恥ずかしいことでも何でもありません。
この就活ニュースペーパーには、就活生の親向けの「親カツ!! 親子で乗り切る『今』の就活」があります。親世代の就職活動と今の就活はまったく別もの。今の就活を知らずに子どもの就活に余計な口を出して邪魔することがないように、実情を知ったうえで優しく見守り、求められたら力になってあげて、と説いています。パソコンだと画面の右側に入り口のバナーがあります。スマホなら「親カツ」で検索すれば、すぐに見ることができます。今週、最新の就活状況を盛り込んだ内容にリニューアルしたばかりです。ぜひ、お父さん、お母さんに教えて、読んでもらってください。きっと、あなたの就活の力になります。
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