ニュースのポイント
日本の少子高齢化は深刻で、人口は増えないし、市場は縮小するばかり。だからどの業界も海外を視野に入れて展開しているというのはビジネス界のいわば常識になっていると思います。中でも急増する訪日観光客のお財布をどう取り込むかは、さまざまな業界の課題となっています。
今回は全国に5万店以上あるコンビニに注目してみました。コンビニ業界3位のファミリーマートと、日本郵便、かんぽ生命、ゆうちょ銀行などを傘下にもつ日本郵政は、業務提携によって訪日観光客の取り込みと、海外ネットワークの拡張というウィンウィンの関係を目指しています。(副編集長・奥村 晶)
今日取り上げるのは、経済面(6面)の「訪日客の購入品 海外配送で提携/ファミマ・日本郵政」です。
記事の内容は――ファミリーマートと日本郵政は5日、訪日外国人向けの配送事業などで業務提携すると発表した。ファミマの国内外の店舗網と日本郵政の物流網を生かし、訪日客が日本で買った品を海外に届ける。2016年度中に、ファミマが約3000店を展開する台湾との間で始める。訪日客は免税品などを日本のファミマに預け、日本郵便が台湾の最寄りのファミマの店舗に預ける。ゆうちょ銀行の多言語対応のATM(現金自動出入機)のファミマへの導入でも合意した。(写真はファミリーマートの中山勇社長=左と、日本郵政の長門正貢社長)
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
ファミリーマート(ファミマ)といえば、今年9月に業界4位のサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングス(UGHD)と経営統合することが決まっています。コンビニのブランドは「ファミリーマート」に統一され、同一ブランドでの国内店舗数は単純合算で1万8000店を超えます。業界首位のセブン-イレブン・ジャパン(1万8613店、2016年3月末現在)と並ぶ大チェーンが誕生するわけです。
海外出店数をみると、ファミマが約5800店で、セブンが約5万8000店と大きく離されています。しかしセブンの場合はライセンス契約が中心、一方のファミマは自ら出資して経営に参画しているため、店舗数を単純に比較しても意味がありません。また、経営に参画していれば業務提携のときに系列店をうまくコントロールできるというメリットがあります。ちなみにローソンをみると、2015年8月現在で海外店舗数は668店にとどまっています。日本郵政がファミマに目をつけた理由がよくわかりますね。
ファミマとの提携で、日本郵政傘下の日本郵便は配送料収入が増えます。ファミマも海外出店の際、日本で買い物した荷物が受け取れるコンビニとして、集客力はもちろん、新規出店に弾みがつきます。
さらに、この記事の最後の1行に注目してください。ファミマに、日本郵政傘下のゆうちょ銀行の多言語対応のATMが導入されると書いてあります。記事には載っていませんが、2017年度に3000台前後のATMを設置する予定です。
みなさんもコンビニでお金を引き出したことがあるでしょう。ATMを設置しているコンビニには、引き出す時の手数料の半額程度が入ります。
訪日観光客は海外の銀行のキャッシュカードやクレジットカードを使うわけですから、手数料無料の時間などは関係ありません。100円、200円の手数料が「塵も積もれば山となる」わけです。この手数料をねらって外国人にとっての利便性を充実させているのが、セブンーイレブンの系列会社であるセブン銀行です。導入当初は日英中韓の4言語だったのが、タイ語やマレーシア語など8言語を加えて画面はもちろん音声案内まで12言語に対応しています。台数は全国で2万台以上あります。この場合、手数料はセブン銀行と店舗側に入ります。同じグループですので、ATM設置のメリットは大きいですよね。
約2万4000カ所ある郵便局やゆうちょ銀行などで全国を網羅しているゆうちょ銀行としても、ATMネットワークの拡大は死活問題でした。コンビニならではの立地の良さでこれまで手薄だった若い世代を取り込むために2014年からファミマへのATM設置をスタートしましたが、さらに訪日観光客をも取り込もうと打って出たのが今回の業務提携です。
紹介したのは経済面の短い記事でしたが、陸運、金融、コンビニといったさまざまの業界の取り組みがわかります。訪日外国人がらみの記事に注目して深掘りしていくと、複数の業界のグローバル対策や課題が一気に理解できるのでオススメですよ。
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