ニュースのポイント
リオデジャネイロ五輪の代表選考を兼ねた名古屋ウィメンズマラソンに福士加代子選手が出場することになりました。福士選手は、1月の大阪国際女子マラソンで日本陸連の設定記録を突破して優勝しました。これで残り2枠となっているリオ五輪への出場は間違いなしかと思われましたが、陸連は内定を出しませんでした。もしも名古屋で福士選手を上回るすばらしい記録を出す選手が複数いたら、そちらに2枠がいく可能性が残るからです。福士選手はその可能性をつぶすため、体にダメージの残る立て続けの出場を決めたわけです。問題のおおもとには、選考基準の曖昧さがあります。
選考基準があいまいといえば、企業の就活も同じように見えます。でも、企業には「今年はこんな学生がほしい」というザクッとした選考基準があるのが一般的です。就活生は企業の選考基準をきちんと見極めることができれば、内定に近づくことができると思います。
今日取り上げるのは、23面(スポーツ面)の「残り『2枠』名古屋のラン/福士が出場エントリー/リオ当確示されずリスクも覚悟/陸上 名古屋ウィメンズマラソン」です。
記事の内容は――リオデジャネイロ五輪の代表選考を兼ねた名古屋ウィメンズマラソン(3月13日、ナゴヤドーム発着)の主な出場選手が25日、発表された。1月の大阪国際女子で日本陸連の設定記録を突破して優勝した福士加代子(ワコール)は一般参加で名を連ねた。五輪代表3枠のうち、昨夏の世界選手権で日本選手最高の7位に入賞した伊藤舞(大塚製薬)は内定済み。残る2人は、昨年11月のさいたま国際、大阪、名古屋から選ばれる。福士は唯一、2時間22分30秒の設定記録を突破しているが、名古屋でこの記録を突破する選手が複数出た場合は代表から落選する可能性も残る。「福士選手には名古屋に出場するのは避けてもらいたい」。日本陸連の麻場一徳強化委員長による異例の出場撤回の呼びかけは届かなかった。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
試験、コンテスト、オーディション、懸賞など、選ばれたいと思って挑戦することは人生で何度もあるでしょう。そのために努力をしたり、戦略を考えたりします。でも、選考基準がはっきりしないと、努力の仕方も戦略の立て方もよく分からなくなります。
新国立競技場のコンペがやり直されました。最初のコンペでいったんは選ばれたイラク出身の女性建築家のデザインが高額になるとか奇抜すぎるとかの理由で大騒ぎの果てに白紙に戻されました。この混乱の一因は、コンペを実施する側が選考基準を明確に示さなかったことにあります。金額だって、上限を設けるならそのデザインが上限内でできるという証明を求めるべきでしたし、デザインだってもっと具体的に求めるイメージを伝えるべきでした。
試験とよばれる選考方法は、おおむね基準が明確です。どういう試験をして、点数の上位順に何人を合格とするということがはっきり公開されています。懸命に努力する甲斐がありますし、その合否には納得するしかありません。懸賞などは、ほとんど抽選です。それはそれで、運が良かった悪かったと納得できます。
中途半端なのが、入社試験という名の就活です。試験とはいえ、ペーパーテストの上位何人をとるということが明示されているわけではなく、面接などの総合評価で合否が決まります。就活生から見ると、どうしてこの会社には落ち、この会社の内定は得られたのか、会社側の選考基準が分からないまま終わるのが普通です。
でも、多くの会社では、大まかな選考基準はあらかじめ決まっています。全体の人数、男女別の数、ほしい人材の能力イメージや人格イメージもその年その年で会社の採用部門では共有されていることが多いと思います。今後急速に海外展開を進めようと考えている会社は、海外要員を増やさないといけないため、語学ができたり、心身ともにタフであったり、コミュニケーション能力が高かったりする人が入りやすくなります。あるいは、古い体質を変えようとしている会社なら、多様な人材を採用するという大まかな基準を設けて、これまで採用したことのない大学から採用したり、外国籍や障がい者、LGBTといったマイノリティーを積極的に採用したりすることもあるでしょう。あるいは、営業系強化が至上命題の会社は、今年は体育会系を積極的にとろうと考えていることもあります。また、社員の不祥事のあった会社だったら、品行方正な学生をとろうとするかもしれません。
こうした選考基準は、明示されないことが多いと思いますが、企業研究をしたり、インターン研修や会社訪問をしたりするうちにぼんやりとは見えてくると思います。少しでも多くの社員に会って、直接話をすることが大切です。そうすれば、面接でどんな話をすればいいかとかグループワークでどんな振る舞いをすればいいか、とかも分かってきます。「選考基準を知り、己を知れば、百戦危うからず」です。
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