2015年12月10日

「爆買い」と「ミニマリスト」で考えるこれからのビジネス

テーマ:社会

ニュースのポイント

 今年の新語・流行語大賞の一つは「爆買い」でしたが、ノミネートされた言葉の中に「ミニマリスト」がありました。最小限のモノしか持たない人のことです。日本は今、人口が減り続け、経済は低成長の時代です。これから会社、仕事を選ぶみなさんは、そんな時代のビジネスを考える必要があります。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、総合面(1面と3面)の「戦後70年 エピローグ⑤夢/豊かさ 峠過ぎた今」「モノに代わる夢模索」です。
 1面記事の内容は――福岡は2015年の新語・流行語大賞に選ばれた「爆買い」の最前線だ。今年のクルーズ船の入港は予定を含め昨年の2倍を超す264隻。来年は400隻の岸壁予約がある。訪日クルーズ客は今年100万人を突破。中国の観光客はいまや日本経済を支える柱の一つだ。新語・流行語大賞には対照的な「ミニマリスト」もノミネートされた。集めていたカメラや本を処分した男性が自らの生活を描いた「ぼくたちに、もうモノは必要ない。」は16万部も売れた。持てなければ共有するという選択肢も。横浜市金沢区の団地では、シングルマザー向けのシェアハウスが誕生した。国の試算では戦後100年を迎える2045年、人口は1億人に減る。土地や建物は余り、働き手も減る。下り坂の国で、新たな夢のものさし探しが始まっている。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

終活アドバイス

 3面の記事では戦後の日本経済の歩みが描かれています。大きな流れをつかみましょう。
【1960年代~1990年】人々の夢はモノに向かい、「高度成長」を共有した。洗濯機、白黒テレビ、冷蔵庫の「三種の神器(じんぎ)」がほぼ全家庭に普及し、次いでカラーテレビ、クーラー、カーの「3C」が売れ、「一億総中流」の認識が広まった。豊かさの象徴だった自動車は1990年、新車販売台数がピークの770万台超に。
【1990年代~】バブル経済が崩壊し、「失われた20年」と呼ばれる時代に。デフレ不況や若者の車離れを背景に最近10年の新車販売は400万~500万台に減少。一億総中流は崩れ、「格差社会」となった。2012年末に誕生した第2次安倍政権の経済政策アベノミクスや円安などで、大企業を中心に業績が回復し、過去最高益を記録する企業も。ただ、人口減少と少子高齢化が進む国内の消費は回復せず、この四半世紀、小売業販売額はほぼ横ばい。

 記事では、「ミニマリスト」と「シェアリングエコノミー」がはやる消費社会では、モノが売れず、経済成長しにくい社会の到来を予想しています。シェアリングは新たなビジネスを生む可能性もありますが、ミニマリストはビジネスに結びつきそうにありませんね。では、そんな時代に考えられる成長するビジネスとは何でしょうか。

 キーワードは、「IT(またはデジタル)」「グローバル」「高齢化」です。ITの進化で、様々な業界に変化が起こっています。ITは日進月歩で進化し続けますから、これからもあらゆる産業に変化をもたらすでしょう。ITをどう利用・活用できるかが、企業の盛衰を左右するに違いありません。

 日本の人口が減る一方で、世界の人口は増え続け、アジアやアフリカの多くの国々がこれから経済成長していきます。その成長を日本の企業が取り込んでいくのが、グローバルです。「爆買い」もその一つ。日本では売れなくなった「モノ」が、世界ではまだまだ売れる可能性があるわけです。今日、「人事のホンネ」の取材で、ユニクロなどを展開するファーストリテイリングの採用担当者にインタビューしてきました。ファストリは「世界一のアパレル製造小売り企業」を目指しています。担当者は「世界には何十億人というお客様がいる。成長のポテンシャルは山ほどある」と強調していました。

 高齢化が進むということは、お年寄り向けの市場が大きくなっていくことを意味します。今日の経済面(10面)には「『終活』新サービスPR」/200社が初の展示会『ENDEX』」との記事が載っています。終活は、高齢者がよりよい人生の締めくくりに向けて活動することで、自分の葬儀や墓、遺言、遺産相続の準備、介護や医療を学ぶことなどを指します。元気な高齢者も増えますから、高齢者向けの新たなビジネスはこれからも生まれるでしょう。

 自分の志望業界が、IT、グローバル、高齢化にどう対応しているのかを知るとともに、これからの可能性を考える。このこと自体が大切な業界・企業研究です。

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