2015年10月02日

どうなる? 東西テーマパーク対決(奥村晶の「今日の朝刊ウィークエンド」)

テーマ:経済

ニュースのポイント

 週明け、米メディア大手による運営会社の買収が大きなニュースになったユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市此花区)が引き続き好調です。2015年度上半期の入場者数は過去最高を記録、入場者数の増加は実に5年連続です。一方、長らくテーマパークで一人勝ちを続けてきた東京ディズニーリゾート(TDR、千葉県浦安市)は前年の入場者数を下回りました。しかし、まだ実数としては、USJの入場者数はTDRの半分以下。米企業による買収で資金繰りが安定したUSJが次にどんな手を打ってくるのか? 沖縄県内に建設着工を予定していた第2パークはどうなるのか? 観光、レジャー業界はもちろん、運輸、建設などインフラにかかわる業界から、キャラクタービジネスを展開する出版社やテレビなどのマスコミ業界に至るまで幅広く影響がある話です。(副編集長・奥村 晶)

 今日取り上げるのは、経済面(7面)の「USJ入場者数、過去最多」です。
 記事の内容は――USJの今年度上半期の入場者数が前年同期比18%増の654万人で過去最高になった。外国人も増え、入場者数全体の約1割を占めた。昨年7月にできた「ハリー・ポッター」の施設が集客に貢献。漫画「進撃の巨人」やアニメ「エヴァンゲリオン」をテーマにしたアトラクションも人気だった。一方、TDRは前年を4.8%下回る1437万人。大型アトラクションの改装があった前年同期に及ばず、東西で明暗が分かれた。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
 

就活アドバイス

 10月1日はちょうど、2015年度の折り返し地点です。10月上旬は、上半期の売り上げなど経営に関する数字を発表する企業も多いので、ぜひ注目してください。
 東西テーマパークとして比較されることの多いTDRとUSJはともに、4月1日(平日の場合)に前年度1年間の、10月1日(同)に当年度上半期の入場者数の速報値などを公表しています。私は住んでいるのが東京の東側なのでTDRのほうがより身近に感じるのですが、今回の記事、実は「明暗」というほど落差があったわけではありません。TDRもこの上半期は歴代で3位の入場者数と、好調を維持しています。昨年同期が突出していただけなのです。ちなみにTDRの場合、入場者数の発表と同時に新規にオープンするアトラクションのスケジュールなども発表します。興味のある企業についてのニュースを、新聞やテレビで見かけたら企業HPをチェックし、その日のニュースリリースなどに目を通すという習慣をつけておくと、企業研究がより深まります。うっかり見逃していた大きなトピックを見つけることもできます。

 9月28日、米メディア大手のコムキャストが、USJの運営会社「ユー・エス・ジェイ」の51%の株を取得して、買収すると発表しました。買収金額は15億ドル、約1830億円です。運営会社は今秋、事業の好調を背景に、東京証券取引所に再上場申請をしていましたが、今回の買収でそれも取り下げました。コムキャストは、米国のケーブルテレビ最大手で、放送やテーマパークを担うNBCユニバーサルを傘下に持っています。

 M&Aや買収のニュースは新聞やテレビで毎日のように見かけていると思いますが、買収される側は資金繰りなどが安定するという大きなメリットがある一方、経営方針などで独立性が制限されるデメリットもあります。いま絶好調のUSJが、株式市場で不特定多数の法人、個人などの株主から広く資金を得るのではなく、米メディア企業の傘下に入るのはなぜなのか。「ハリー・ポッター」など人気アトラクションの建設のため巨額の先行投資をしていたことが原因の一つでしょう。今後5年間でさらに大規模なアトラクション建設を検討しているUSJにとって、投資資金の安定的な確保が不可欠だったのです。
 USJの現在の主要な株主は米金融大手のゴールドマン・サックスです。USJの企業価値は62億ドル(約7500億円)と評価されていましたが、現時点で約4000億円の借金があります。それを差し引いた3500億円の半分強をコムキャストが11月中に買い取る予定です。運営会社の社長など経営陣も入れ替わります。

 USJの好調の背景には、ハリポタに加えて、ディズニー関連以外のキャラクターなら何でもアリ、という柔軟な発想で、人気アニメ「ワンピース」「妖怪ウォッチ」など、日本独自のアトラクション展開をしてきたことがありました。コムキャストはそういった独自路線を今後も尊重するとしていますが、一方、来年の着工をめざしていた沖縄県内に計画中の第2パークについては、明言を避けています。コムキャスト側の意向次第で遅れる可能性も出てきました。新しい経営陣によってUSJの方向性がどうなっていくのか。引き続き注目してください。

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