2015年09月15日

「社会貢献」だけじゃだめ!ビジネスとの両立考えよう

テーマ:経済

ニュースのポイント

 「社会貢献」は最近の就活生のキーワードの一つです。仕事を通じて社会貢献したい、というのは素晴らしいことです。でも、企業はボランティア組織ではありませんから、ビジネスと社会貢献が両立しなければ長続きしません。東日本大震災の被災地で、大手IT企業がそんな地道な試みを続けています。被災地支援とビジネスのあり方を考えます。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(9面)の「IT大手 舞台は被災地/海産物通販など 新事業探る/『復興支援』だけでは売れず」です。
 記事の内容は――宮城県石巻市の鮮魚店「プロショップまるか」は、ヤフーの通販サイト「復興デパートメント」で全国に魚を販売している。東北3県の海産物や伝統工芸品などを扱うサイトは震災9カ月後の2011年12月に開設。販路を広げたいという地元企業の声を受けて始め、現在、出店事業者は約1000、約3000点の商品を扱う。まるかの佐々木正彦社長は「接点のなかった多くの顧客をネットでつないでくれた」と話す。ヤフーは2012年から石巻市に拠点を構え、腰を据えて被災地でのビジネスに取り組むが、復興デパートの売り上げは年3億円程度で横ばいが続き、事業としてはまだ赤字だ。宮坂学社長は「東北と長く関わっていくには、少しでも黒字の事業にして取り組みを大きくしていくことが必要」と語る。今後はITに強い人材を東北で育て、SNSで特産品情報を発信するなどのてこ入れを検討。他の地方でのビジネス展開の足がかりにしたい狙いもある。グーグルは2013年5月から、被災地と全国の企業や人をネット上で結びつける「イノベーション東北」を展開。東北の企業の要望と、それに応える技術を持つ人や企業を引き合わせるサービスで、これまでに570組以上の引き合わせに成功した。グーグルも全国展開を見据える。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 今回の関東・東北豪雨では、茨城、栃木、宮城の3県で計7人が亡くなりました。たくさんの家が流され、まだ水が引かない地域も多くあるなか、全国からボランティアが続々と入っています。ボランティア活動や、企業の無償支援はとても大切ですが、東日本大震災のように復興に何年もかかる災害では、息の長い支援活動が欠かせません。だからこそ、企業の利益が支援にもつながる仕組みづくりが必要となります。

 エントリーシート(ES)の学生時代に取り組んだことに「被災地での支援活動」を書いてアピールしたり、志望動機に「社会貢献」と書いたりする学生が多くいます。素晴らしいことですが、そこだけを強く主張しても企業には響きません。「人事のホンネ」で各社の採用担当者はこう言っています。

三井物産 (志望動機で多いのは)「自分も仕事を通じて社会貢献したい」という人ですね。企業はボランティア活動をしているわけではありませんので、新しいものをつくり出して世の中を良くしていくという気持ちが大切です。
住友生命 「人に役立つことを学生時代にやってきて、喜びを感じたので社会貢献性の高い会社で働きたい」など、表層的な部分で書いている人が多い。間違った話ではないが、どんな会社も社会貢献しているので、生保だからこそできる社会貢献はこうだとか、自分のどういう強みを当社でどう生かせるかとか、踏み込んで書いてほしい。もう少しリアルに当社で働く姿をイメージして何ができるかまで書けるといいと思います。
電通 (ありがちな志望動機は)「グローバルな仕事がしたい」「社会貢献」「人の役に立ちたい」。でも、グローバルな仕事についてあまり考えていなかったり、社会貢献をビジネスにどう結びつけるかまで考えていなかったり。あくまでビジネスをしている会社なので、その視点を抜きに人の役に立ちたい……とかでは難しいですね。

 今日の記事のIT企業による復興支援は、まさに社会貢献とビジネスを両立させる取り組みです。被災地支援として始めたわけですが、うまく回れば、全国どこでも成り立ちますから、大きなビジネスチャンスでもあるんですね。IT企業に限らず、両立できる事業はきっとたくさんあります。ESや面接で、社会貢献や被災地支援をアピールするなら、こんな実例を知ったうえで、被災地支援とビジネスの両立を考えてみてください。考えること自体が、志望動機を深めたり、自己PRを強めたりすることにもつながりますよ。

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