ニュースのポイント
中国経済の減速が日本のメーカーの業績に影を落としています。少し前までは、中国のインフラ需要でたくさんの日本メーカーが高収益をあげていましたが、成長にブレーキがかかったことで今度はマイナスの影響を受け始めています。中国経済は、良くも悪くも日本の製造業の命運を握っているともいえそうです。日本の景気、あるいは世界の経済も左右する大きな存在ですから、目が離せません。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(7面)の「中国減速 日本企業に影/建設機械・スマホ関連へ影響/クルマ販売 先行き警戒」です。
記事の内容は――中国経済の減速に日本の製造業が警戒感を強めている。建設現場や工場で使う機械が思うように売れない。中国株式市場の低迷が響けば、自動車販売など消費が冷え込むかもしれない。製造業各社の4~6月期は全体としては好決算が続く。米国の好景気や円安を背景に自動車を中心に過去最高の利益水準が目立つが、中国経済が想定以上に悪化すれば、足もとを崩しかねない。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
中国は、アメリカに次ぐ世界2位の経済大国です。国内総生産(GDP)で日本を抜いたのは2010年ですが、2014年には日本の2倍の規模になりました。日本がほとんど成長しない間に、毎年2桁前後の成長を続けてきたからです。2012年以降の成長率は7%台に落ちましたが、それでも日本の高度成長期並み。2014年の貿易統計によると、日本から中国への輸出総額は13兆3815億円で、2年連続でアメリカに次ぐ2位でした。中国経済の影響は絶大なのです。かつて「アメリカがくしゃみをすると日本は風邪をひく」などと言われましたが、これからは「中国」に置き換えて言われるようになるかもしれません。
昨年8月27日のこの欄で「日立、東芝、三菱電機、中国のインフラ競う」とのタイトルで、中国の建設ラッシュでエレベーターなどインフラ事業で日本企業が売り上げを伸ばしているという話を書きました。1年経って状況は様変わりしたわけです。2008年のリーマン・ショック後の世界同時不況のとき、中国は積極的な公共投資などで世界経済の回復を引っ張ったと言われており、そのときの無理がたたり減速し始めたとの見方もあります。今回の減速は地価下落が直接のきっかけですが、6月半ばから株式市場が急落したことから、個人消費の冷え込みも心配されています。
今日の記事には、日本メーカーの中国市場での現状が書かれています。どの企業がどんな課題に直面しているのか、参考にしてください。
◆三菱電機=4~6月期のエレベーターの受注が前年同期より約15%下がった
◆日立製作所=エレベーター受注にかげり
◆コマツ=4~6月期の建設機械の売り上げが前年同期より4割減
◆ファナック=金属ケースの加工装置などスマホ関連の生産装置の受注が4~6月期後半から急減。2016年3月期の営業利益予想を4月時点から2割近く引き下げ
◆旭化成=スマホの配線基板づくりに使うフィルムの販売量が4~6月期は想定を下回った
◆トヨタ自動車=中国での新車販売台数は1~7月で前年より12%増で一見堅調だが、4~6月期決算では、現地法人の純利益が前年同期より半減
◆日産自動車=4~6月期の販売台数は前年同期より0.5%増だったが、1~3月の11.3%増に比べて伸び幅は縮む
中国の景気が悪くなると、急増中の訪日外国人旅行客数に影響し、話題になった「爆買い」も今後どうなるかわかりません。メーカーだけでなく、旅行、運輸、小売りなど多くの業界にも影響します。中国経済の先行きに注目してください。
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