ニュースのポイント
「ジェネリック医薬品」を知っていますか? 新薬の特許が切れたあと、同じ有効成分でつくられ、価格が安い「後発医薬品」のことです。高齢化で増える医療費を抑えようと、政府は薬の80%以上をジェネリックにする目標を掲げました。身近なジェネリック医薬品の「基本のき」と、拡大の影響を知りましょう。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、生活面(33面)の「ジェネリック 信頼性は?新薬と同じ有効成分・安い価格」です。
記事の内容は――政府は医療費抑制のため、ジェネリック医薬品の使用率を2020年度末までに80%以上にする目標を打ち出している。使用率(数量ベース)は年々伸びて2013年9月時点で46.9%になったが、米国の約90%、ドイツの82.5%、英国の75.2%を大きく下回る。ジェネリックは有効成分の種類や量、効能などは先発薬と同じでなければいけないが、形や大きさ、含まれる添加剤などは違ってもいい。薬の承認手順も異なり、先発薬は一定数の患者で有効性や安全性を確かめる「
治験」が必要だが、ジェネリックは不要で、薬を飲んだ後の血液中の有効成分濃度が先発薬と同じかどうかを調べる試験をする。先発薬とジェネリックで効果や副作用に違いがあると指摘する論文や学会発表もあり、国立医薬品食品衛生研究所は2008年から、専門家による検討会で薬の品質を調べてきた。日本ジェネリック医薬品学会によると、1998年から、ジェネリックが先発薬と同等かを調べる品質再評価も実施され、品質が不十分な薬は排除されたという。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
「この薬はジェネリックもあります。新薬とどちらにしますか?」
調剤薬局で薬を処方してもらうとき、薬剤師さんからこう尋ねられたことがある人も多いと思います。
新しい薬の開発には10年以上の時間と数百億円規模の研究開発費がかかります。すぐにまねされたら新薬をつくる製薬会社がもうからないので、開発した会社が最長25年間、独占的に販売できる特許期間が設けられています。特許が切れた後、別の製薬会社が同じ有効成分を使ってつくるのがジェネリック。数千万~1億円ほどで製品化でき、先発薬の5~6割程度の値段で販売されます。
私たちの暮らしに身近な存在であるジェネリック医薬品ですが、国の財政に関わる問題でもあります。日本の医療費は高齢化で年々増え続けています。国が1000兆円もの借金を抱える中、医療費の増加をいかに抑えるかが課題です。安いジェネリックを増やして2020年度末に80%以上にすれば、医療費を1兆3000億円節約できるというわけです。医療費は公費(国と地方の税金)と保険料、患者の窓口負担で賄われているので、患者の窓口負担も減ります。
製薬業界には大きな影響があります。製薬会社は大きく分けて、武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共などの新薬メーカーと、日医工、沢井製薬、東和薬品などのジェネリックメーカーに分かれています。新薬の大手の売上高は年間1兆円を超える一方、ジェネリックはトップの日医工でも1000億円規模。大きな差がありますが、政府のジェネリック普及促進策で今後伸びる可能性がありそうです。厚労省の調査では、ジェネリックを使いたくない人の多くが「効き目や副作用に不安があるから」を理由に挙げています。日本で欧米並みの普及率が実現するかどうかは、ジェネリックの品質調査についての理解が広がるかどうかがポイントになりそうです。
今日の経済面(6面)には、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉について「新薬保護期間 最大の焦点」との記事も載っています。遺伝子組み換えや細胞培養でつくる「バイオ医薬品」の新薬データの保護期間について、新薬メーカーが多いアメリカは「12年」、日本は「8年」を主張。ジェネリックを多く使うオーストラリアやマレーシアなどは「5年」を求めています。28日に始まる閣僚会合の最大の焦点です。こちらにも注目してください。
ジェネリックについては、5月29日の業界トピックス「ジェネリック普及、8割目標に 日本の製薬業界はどう変わる?」でも書いています。読んでみてくださいね。
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