ニュースのポイント
労使で決めた残業時間を超えて残業をさせていた靴チェーン店が書類送検されました。国は、働きすぎを防ぐため、対策班を立ち上げて捜査を強化しているところでした。日本経済は、働き手の減少が深刻になっています。その対策として女性を活用すること、つまり女性が働きやすい社会を作ることが重要になっています。そのために残業大国ニッポンの汚名を返上しないといけないという大きなうねりになっているのです。今のトレンドは、「残業の少ない会社がいい会社」だということを覚えておきましょう。(朝日新聞教育コーディネーター・一色清)
今日取り上げるのは、社会面(34面)の「ABCマート残業/月100時間超の疑い/書類送検」です。
記事の内容は――靴チェーン店「ABC-MART原宿店」が従業員に月100時間ほどの残業をさせたなどとして、東京労働局は2日、運営するエービーシー・マート(東京都渋谷区)や同社の取締役らを労働基準法違反(長時間労働)の疑いで東京地検に書類送検した。働き過ぎを防ぐため、国は対策班を立ち上げて捜査を強化しており、対策班初の書類送検となった。発表によると、原宿店は昨年4~5月、20代の従業員2人に、それぞれ月109時間と月98時間の違法な残業をさせた。店では労使協定で「残業は月79時間まで」と定めていた。東京労働局によると、閉店後の店内レイアウト変更やイベント準備が長時間労働につながっていた。エービーシーでは過去にも違法な長時間労働をさせる店があり、労働基準監督署が指導してきたが、昨年のような事例があったため、書類送検に踏み切ったという。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
今、残業に対する社会の空気が変わってきています。少し前までは、会社に毎晩遅くまで残っている人が「仕事熱心な人」とみなされがちでした。ただ、数年前から「会社に遅くまでいる人は仕事のできない人」などと言う経営者が目立ち始めました。実際、夜8時になると、会社の電灯を強制的に消してしまうといった大企業が出始めました。横浜にあるエンジニアリング会社では、始まった当初、電灯が消えたあとも残っていた人がいたそうです。それがばれないように出入りのゲートを乗り越えて帰ろうとした社員が防犯カメラに捉えられ、大目玉を食ったなどという話が伝えられています。今は慣れて、早く仕事を終えて早く帰るというスタイルが定着したそうです。
代わって推奨されてきたのが、朝の有効活用です。朝早く出勤して仕事をする社員のためにバナナなどの軽食を用意する会社も出てきました。政府も、朝早くから仕事をして夕方早くに切り上げて自分の生活のために使う「ゆう活」の旗を振っています。
背景には、女性の働きやすい社会づくりがあります。人口が減る中で、働き手を確保する選択肢としては、高齢者、女性、外国人があります。ただ実際には、高齢者には体力、気力の面で限界がありますし、外国人労働者を大量に増やすことは社会に抵抗感があります。ですから、選択肢の中で最も有力なのは女性にもっともっと社会の前面で活躍してもらうことです。そのためには、男女とも「就業時間が終わればさっと帰れる社会」を作らないといけないというわけです。
就職を希望する会社の残業時間を調べるのは簡単です。働いている先輩に聞いても、それなりに分かるでしょう。中には、いかにたくさん残業しているかを自慢げに話してくれる先輩もいるかもしれません。実際に夜、会社に行ってみて、窓の明かりや出てくる人を観察しても、おおよそのことは分かります。
今も残業の多い会社については、「社員のことを考えていない」とか「経営に余裕がない」とか「遵法精神が薄い」とか、いろいろとマイナス要素を挙げることができますが、最大のマイナス要素は「時代に遅れている」ということでしょう。時代に鈍感な会社は避けた方がいいと私は思います。
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