ニュースのポイント
日本と韓国が国交を正常化して22日で50年を迎えました。両国の間には今、政治や外交の課題が山積み。双方の国民には「反日」「嫌韓」感情が広がったとも言われています。それでも、日本の「韓流」、韓国の「日流」は根付いていますし、両国はお互いに第3位の貿易相手国で企業同士の関係も深まっています。今日は日韓関係を考えます。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、1面の「日韓首脳、協力を強調/国交50年 両国で式典」です。総合面(2面)に「時時刻刻/日韓 土壇場の改善演出」、オピニオン面(16面)に社説「関係改善の流れ加速を」、社会面(37面)に「逆風めげず 日韓交流50年/意気投合 草の根継続」が載っています。
記事の内容は――22日、東京とソウルで開かれた日韓国交正常化50年の記念式典に安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領がそれぞれ出席。安倍氏は「朴大統領と力を合わせて共に努力していきたい」と関係改善を呼びかけた。一方、朴氏は日韓が協力を深めるためにも歴史問題の解決を求めた。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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日本で安倍首相、韓国で朴大統領が就任して2年半が経ちますが、隣国なのに首脳会談が一度も開かれないという異例の関係が続いています。朝日新聞と韓国の有力新聞・東亜日報が5月から6月に共同で行った世論調査では、両国関係がうまくいっていないと回答した人が日本で86%、韓国では90%にのぼりました。
今の日韓間の問題の多くは、1910年の「韓国併合」から1945年の日本の敗戦まで、日本が韓国を植民地支配したことに原因があります。その後、1965年に日韓基本条約などが結ばれ、国交が正常化しました。しかし韓国併合をめぐっては、不法だったとする韓国に対し、日本は当時の国際法に照らして合法だったと主張。韓国は植民地支配で生じた被害や損失を請求する権利(請求権)を求め、日本は認めていませんでしたが、双方が都合良く解釈できる内容で正常化しました。日本が韓国に経済協力資金として計5億ドル分を渡すことを約束し、「完全かつ最終的に解決された」と確認したのです。この玉虫色の合意が、今も尾を引いています。韓国は2005年から、慰安婦、原爆被害者、サハリン残留韓国人への対応は正常化交渉で議題にならなかったため、未解決だと主張。「解決済み」とする日本と対立が続いているわけです。さらに、竹島の領有権をめぐっても争っています。
政治、外交ではさまざまな問題を抱える両国ですが、交流が深まっている面もあります。今日の社会面には、草の根の流が続いている例を紹介しています。2014年に韓国を訪れた日本からの旅行者は228万人で、この2年で4割ほど減りました。一方で韓国から日本への旅行者数は275万人で過去最高を記録しました。日本での韓流は一時期の勢いは衰えたとはいえ、韓国ドラマは毎日のようにテレビで放映され、定着しています。韓国でも日流が人気で、書店では村上春樹さんらの小説が並ぶ日本書籍コーナーが大きなスペースを占めるといいます。駐日韓国大使館の韓国文化院長、沈東燮(シム・ドンソプ)さんは朝日新聞の記事で「ケーブルテレビやネットで日本のアニメはよく見られています。『キティちゃん』は韓国人が一番好きなキャラクターで、日本のマンガも大人気です。最近、若い韓国人観光客が続々と鎌倉を訪れていますが、バスケットボール漫画「スラムダンク」の舞台だからです」と語っています。
経済面でも両国はお互いに切っても切れない関係になっています。電機、半導体、鉄鋼、造船などでは、両国の企業はライバル関係にあります。韓国最大の企業・サムスン電子も日本の電機メーカーにとっては巨大なライバルですが、世界のスマホ市場でシェアトップを走るサムスンのギャラクシーは、部品の9割以上が日本製と言われます。自動車部品では、逆に韓国の部品メーカーの品質がよくなり、福岡に工場がある日産自動車などは韓国製の部品を多く使っています。昨年からは日韓双方のナンバープレートをつけたトレーラーが、玄界灘を渡り、両国をまたいで走るようになりました。積み替えの必要がなく、大幅な時間短縮になるからです。
メーカーを中心に、日韓の企業の交流はこれからさらに深まるとみられています。就活生は、身近な韓流に加えて、企業にとっての日韓関係についても関心を広げてください。
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