ニュースのポイント
ソフトバンクの人型ロボット「ペッパー」が2月末、開発者向けに発売され、1分で売り切れて話題になりました。情報技術(IT)や人工知能(AI)と結びついて、ロボットは急速に進化しています。一方で今ある仕事の半分は、数十年後にはロボットがやるようになるという予測もあります。私たちはロボットに仕事を奪われるのでしょうか。人間は何をすればいいのでしょうか。(写真は、接客するペッパー)
今日取り上げるのは、金融情報(14面)の「経済気象台/21世紀の仕事」。「経済気象台」は、第一線で活躍する経済人、学者など社外筆者によるコラムです。
今日の筆者は、日本では正社員が減って非正規雇用が4割に近づき、米国でも少数の高賃金雇用と多数の低賃金雇用の二極化が進んでいると指摘。IT、ロボット、人工知能などの技術革新で機械が人間の仕事を代替する領域も増え、このままでは「一生懸命働けばまともな賃金が得られる仕事」が減り、格差も拡大することを懸念しています。「『まっとうな仕事』を増やすための処方箋(しょほうせん)を考えることは、現役世代の将来世代に対する責務」と論じました。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
コラムにも登場しますが、英オックスフォード大は2013年に「ロボット化などの技術革新で、20年後には米国で働く人の半数の仕事が機械にとって代わられるリスクがある」という衝撃的な内容の報告書を出しました。コンピューターソフトによる東京大学合格をめざして「東ロボくん」を開発している国立情報学研究所教授の新井紀子さんも、今年1月の朝日新聞紙面で「およそ15年後は、今の仕事の3~4割が、AIを含むロボットに置き換えられるだろう」と話しています。
18~19世紀の産業革命で肉体労働が機械に置き換わり、ロボットが工場で活躍し始めたのは1970年代。自動車などの製造ラインで、組み立てや塗装など人間の腕や手の動きを機械に置き換える産業用ロボットが急速に普及し、2012年には世界で約124万台が稼働していました。ロボットの普及とともに、雇用の中心は製造業からサービス産業へ。近年は、災害対策や高齢者介護用のロボットも登場。コンピューターの性能向上と人工知能との組み合わせで、ペッパーのように接客もできるロボットが生まれ、サービス業にも進出し始めたわけです。
すでに電話の問い合わせに対応するコールセンター機能は機械が対応するケースが増えています。これからは銀行や保険の審査などデータを分析する分野にも人工知能が導入され、事務的な経理、金融機関や医療機関の窓口対応といった業務は機械がするようになるかもしれません。最近話題の「ビッグデータ」の解析はコンピューターにしかできません。ほかにも、物流ではすでに米アマゾンが倉庫で商品を仕分けるロボットを導入し、小型無人機での配達を計画していますし、自動運転自動車が普及すれば運転手もいらなくなります。
どんな仕事をロボットに任せ、人間は何をするのか。一概には言えませんが、マニュアル化できる仕事と大量のデータを分析するような業務はロボットにというのが一つの目安でしょう。一方で、ヒト、モノ、カネが絡み合った複雑な状況から判断するマネジメント、人の細やかな気持ちを理解しなければできない仕事はマニュアルにはできません。経営や財務のほか、アイデアを出したり、企画を立てたりする仕事、芸術などの創造的な分野は、人にしかできないこととしてより重要になるかもしれません。単純な営業はロボットがやってくれそうですが、取引先の心情をくみ取って要望に応じるような「おもてなし」の心が必要な営業は、ロボットにはできないでしょう。もちろん、今は考えつかないような新しい仕事が生まれている可能性もあります。
みなさんが就職してすぐにロボットに仕事を奪われるようなことはないと思います。でも、数十年働くかもしれない会社を選ぶのが就活です。長期的な視点で、どんな会社でどんなスキルを身につけていくべきなのかも考えてほしいと思います。
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