ニュースのポイント
大手企業がベンチャー企業と事業提携したり、出資したり、手を組むケースが増えています。グローバル化の時代に対応しようと、次代の新しいビジネスや技術を求めているからです。大企業志望者も、起業を考えている人も見逃せない動きです。
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「ベンチャーとタッグ 大企業追求/提携・出資 知恵を吸収/『自前主義』脱却図る」です。
記事の内容は――毎週木曜日の朝、大企業の社員がベンチャー企業との出会いを求めて集まる「モーニングピッチ」というお見合いイベントが東京で開かれている。18日は教育、ロボット、酪農などのベンチャー10社の代表が事業内容や将来ビジョンをアピール。客席には大手商社や不動産、放送・通信、メーカーなどの新事業担当者らが座り、審査員役の企業の社長が質問した。トーマツベンチャーサポートなどが昨年1月に始め、これまでに430社のベンチャーが参加。約100件の出資や事業提携に結びついた。
海外企業との競争や少子高齢化による国内市場の先細りといった環境変化を受け、大手には、研究開発などを自社の人材や資源でまかなう「自前主義」から抜け出して外部の技術や知恵を積極的に取り入れる動きが広がり、ベンチャーへの関心が急速に高まっている。キユーピーは今年、野菜や果物を企業オフィスの冷蔵庫に補充して売る会社に5000万円出資、ドレッシングの売り先を開拓した。ゲーム大手グリーはオンラインリフォーム事業を手がけるベンチャー買収を発表。KDDIは2011年からベンチャーのサービス開発や事業計画づくりの手助けを始め、30社以上を支援した。企業合併や買収の助言会社レコフによると、国内の上場企業などによるベンチャーへの出資や買収・合併は今年1~11月までに93件と2000年以降で最多になった。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
「モーニングピッチ」の審査風景を見て、かつての人気テレビ番組「スター誕生!」を思い出しました。歌手志望者がステージで歌って審査を受け、合格者を集めた決戦大会で芸能事務所やレコード会社がプラカードを挙げてスカウトするというものでした。山口百恵、ピンクレディー、小泉今日子、中森明菜らがここからデビューしました。この手法はその後「お笑いスター誕生」「マネーの虎」などの番組に受け継がれ、今でもときどき見ることがあります。モーニングピッチも、ベンチャー企業が自社の事業を懸命に売り込みます。客席で興味をもった大手企業があれば、事業提携したり、出資を受けたりして、メジャーデビューがかなうという新しい試みです。
これまで日本ではベンチャー企業の「ゴール」は成長して株式を上場することというイメージが強くありました。一方、米国では大企業に買収されるケースが大半です。ちょうど1年前、東京大学発のヒト型ロボットベンチャー「SHAFT(シャフト)」が米グーグルに買収されたというニュースが世界を駆け巡りました。シャフトの関係者は当初、新産業を日本で育てようと、日本の投資会社や大企業の新規事業部門、経済産業省や産業革新機構など十数カ所に投資を要請しましたが断られ続け、グーグルにたどり着いたそうです。グーグルはこの時期に世界のロボットベンチャー8社を買収しました。グーグルが何を仕掛けてくるのか、いま世界が注目しています。
遅ればせながら、国内でも大手がベンチャーに目を向け始めたことを報じたのが今日の記事です。従来の「自前主義」ではグローバル競争で変化が激しい時代に対応できないためですが、上場以外の選択肢が増えればベンチャーが育ちやすい環境づくりにつながると期待されています。大手を目指している人も、起業を志す人も、あるいはベンチャー企業で経験を積みいずれ独立したいという人も、知っておきたい新しい動きです。今は多くの大手企業が新規事業に取り組む時代です。今日の経済面(8面)には、「オムロン、ベンチャーとロボット開発へ」という記事も出ています。ちなみに朝日新聞社も「メディアラボ」という部署で新しいメディア開発などの新規事業を試みています。
最後に、私が所属する教育総合本部とメディアラボが一緒に始める新規事業を紹介します。無料オンライン教育サイト「gacco」に開講する「メディアリテラシー講座」で、いま受講生を募集しています。開講は来年2月12日。4週にわたる講義で情報の収集と発信の基礎を学びます。就職を控えた大学生などに役立つ内容で、私も講師を務めています。受講には登録が必要です。ぜひご覧ください。講座受講を前提に、希望者には就職活動への応用を想定した有料の対面授業も3月10日に東京で開きます。詳細は下記の講座ページから。
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