2014年12月24日

金融志望じゃない人も!NISA基礎講座

テーマ:経済

ニュースのポイント

 「NISA(ニーサ)」って知っていますか? 正式名称は「少額投資非課税制度」と堅いのですが、つまりは個人の投資家を増やして経済を活性化しようと今年1月に始まった新しい制度です。今のところ利用者は高齢者が中心で若者の利用は少なく、せっかく専用口座をつくっても半分も利用されていないなど、期待通りには広がっていません。このため政府はもっと使い勝手のよい仕組みに変える方針です。銀行・証券など金融業界志望者はこの動きを絶対に押さえましょう。日本の経済全体にも関わるテーマですから、金融志望以外のみなさんも制度の基本的な仕組みは知っておきたいところです。

 今日取り上げるのは、経済面(4面)の「NISA初年 思惑外れる/年内800万口座到達の予想でも…若者ら新たな投資家増えず/使い勝手よく見直し」です。
 記事の内容は――NISAは、株や投資信託を買ってもうけが出たとき、通常かかる20%の税金がかからない仕組み。非課税で投資できるのは年100万円まで。「貯蓄から投資へ」をねらったが、日本証券業協会の6月の調査では、専用口座をつくった人は高齢層が中心で20~30代は1割強。投資未経験者は12.2%で、若者や女性ら新しい層を取り込めていない。専用口座は年内に800万近くに達すると予想されるが、実際には半分も利用されていないとみられる。このため安倍政権は2016年から仕組みを変える方針。非課税枠を120万円に引き上げ、祖父母や親が資金を出して0~19歳の子や孫の口座をつくる「ジュニアNISA」も始める。20歳になったら通常のNISAに自動的に移ることで、若年層の投資家増にもつながる。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 NISAは20歳以上が対象ですから、みなさんの多くは実際に口座をもつことができます。100万円は投資の世界では「少額」とはいえ、個人にとっては大金です。実際に始めた人は多くないでしょう。それでも、導入理由と制度の基本は知っておきましょう。

 日本の個人の金融資産1600兆円の半分以上は現金や預貯金で、米国では過半数を占める株式や投資信託には10%強しか回っていません。NISAをきっかけに投資されるお金が増えれば、企業が株式市場から資金を調達しやすくなり、経済活動が盛んになることが期待されています。政府は金融業界の要望も受け、①60代以上の世帯の預貯金を投資に向かわせ経済活性化につなげる ②資産の少ない若年層が長期投資によって資産をつくる――ことを狙って、制度を創設しました。

 仕組みは難しくありません。NISAを利用するには、まず個人で証券会社や銀行に専用口座をつくり、この口座から株や投資信託に投資します。すると、もうけが出たときに税金がかからず、最長5年間優遇されます。非課税となる投資枠は年100万円なので、5年で最大500万円までの投資ができます。持てる口座は1人一つだけです。

 証券会社や銀行は、昨秋からテレビや新聞などで派手な広告を展開してきましたが、記事にあるように思惑通りには進んでいないのが実情です。NISAのお手本は英国のISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座、アイサ)。その前に日本の頭文字Nを置きました。その本家では18歳以上の約半数がISAの口座を持ち、うち6割を50代以下が占めると言われます。要因の一つが18歳未満の子ども名義で親や親族が口座を開く「ジュニアISA」制度。子どものときから資産形成について考えるきっかけにもなっているようです。そこで日本政府は、また英国のジュニア制度を見習うことにしたわけです。年末に決める与党の税制改正大綱に盛り込まれる見通しです。一方で「ジュニアNISA」については、資産の格差が親から子へ引き継がれやすくなり、格差の固定化につながるとの指摘も出ています。

 NISAについては、基本的に元本が保証されている預貯金とは違い、損をするリスクがあることも知っておかなければなりません。税金がかからず得するのはもうけたときだけ。買った株や投資信託が値下がりすればもちろん損をします。

 年明けからのNISA2年目の広がりや制度見直しの行方にも注目してください。

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