2014年12月10日

暮らし方重視、あえて中小企業選んだ学生の話

テーマ:就活

ニュースのポイント

 仕事と生活をともに大事にする「ワーク・ライフ・バランス」を重視して、小さな専門商社を選んだ先輩がいます。就職率や内定率が上がり、学生の大企業指向が強まっているようですが、有名大企業ばかりに目を向けていると痛い目に遭いかねません。ネームバリューや規模の大きさに惑わされず、仕事のやりがい、働きやすさなど、幅広い視点で企業を探しましょう。

 今日取り上げるのは、生活面(27面)の記事で、有権者に20年後のイメージを聞く衆院選連載「青空みえる?20年後の私たち②20代/経済成長、期待したいけど」のうち、大学生「仕事も家庭も大切だから」です。
 記事の内容は――神戸市の大学4年生阿部隼人さん(23)は従業員二十数人の小さな商社に内定、来春から働く予定だ。鋼管製品輸出の専門商社で海外出張も多く、新人でも仕事を任される分、やりがいを実感できると思った。「企業のネームバリューは興味がない。大企業でも安泰とは言えない時代ですから」と言う。大手製薬会社勤務の父は単身赴任が長く、経済的に余裕があっても家族と一緒に過ごせなくて幸せなのか、との疑問が膨らんできた。就活では仕事と生活のバランスを重視し中小企業に絞ってエントリー。若手社員と話し、従業員を大切にする会社か、休みが取りやすいかも確かめた。貿易事務の知識を身につけ、家族との時間も大切にしながら、20年後も輸出関連の仕事で活躍していたい。(写真は「カナダ留学で日本の良いところ、悪いところが見えてきた」と話す阿部隼人さん)
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 大学3年生のみなさんの中には、大手企業、有名企業からいくつも内定をもらった先輩の話を聞いて、自分の就活も「楽勝」と考えている人がいるかもしれません。たしかに、業績向上にともなって採用数を増やしている会社が多く、就職率、内定率がアップし、学生が有利な「売り手市場」という言葉も定着してきました。一方で、思うような結果が得られず、まだ就活を続けている先輩もたくさんいて、今年はこうした学生の「二極化」が進んだと言われています。

 苦戦する学生に共通してみられる特徴が二つあります。一つは「売り手市場」の状況で油断し、企業研究などの準備が遅いこと。二つ目は「あこがれ、好き」だけが軸の企業選びです。数年前、就活が「超氷河期」と呼ばれたころ、就活生に中堅・中小企業指向が強まりミスマッチが減ったと言われました。ところが、最近また大企業指向が強まっているようです。もちろん大企業をめざすのが悪いわけではありません。一生懸命、業界・企業研究をしてめざしてください。でも、数十社にエントリーするとして、有名人気企業ばかりだとリスク大です。

 一般的に大企業は待遇がいいし、影響力もありますが、人気が高く、就活においては狭き門です。倍率数百倍という企業も多くあり、誰もが内定をもらえるわけではありません。2015年卒の大卒求人倍率は1.61倍です。就活生1人あたり1.6個の椅子あるということですから、必ずどこかには就職できるはずですよね。でも従業員数で分けると、1000人未満の中堅・中小企業の2.57倍に対し、1000人以上の大企業は0.73倍しかありません(リクルートワークス調べ)。

 日本には企業が約386万社あります。そのうち、なんと99.7%が中堅・中小企業で、労働者の7割がそこで働いています。日本の経済を支えているのは中堅・中小企業なんです。早めに目を向けて、選択肢を広げておくことをお勧めします。今日の記事の主人公・阿部さんは、仕事と生活の両立、やりがいなどを軸に会社選びをして、小さな専門商社に絞りました。中小企業ならワーク・ライフ・バランスを取りやすいというわけではありません。阿部さんの就活でとくに見習ってほしいのは、直接社員に会って会社のこと、働き方などを確かめたことです。

 ただし確認の仕方には注意が必要です。企業が求めているのは一緒に働ける人です。会社説明会や社員に会ったときに、残業や休み、福利厚生のことばかり聞くのは得策ではありません。あなたが会社の採用担当者だったら、こんな学生がいたらどう思いますか。まずは、仕事のこと、やりがいがあってですよね。そこははき違えないように。だからこそ、個別に話が聞けるOB・OG訪問が大切です。きっと本音を聞けますよ。

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