2014年12月09日

景気は良いの?悪いの?日本経済の今を知ろう

テーマ:経済

ニュースのポイント

 経済成長率は良くないのに、東京株式市場は活況で株価は上がっています。日本の景気は良い方向に向かっているのか、悪化しているのか。衆院選の争点にもなっている「日本経済の今」を整理します。

 今日取り上げるのは、1面トップの「設備投資 落ち込み拡大/GDP年1.9%減 企業生産、海外シフト」と、2面の「時時刻刻/景気実感 冷える街角」です。
 1面記事の内容は――2014年7~9月期の国内総生産(GDP)の実質成長率が下方修正され、年率換算で1.9%減になった。製造業を中心に好業績がめだつが、景気のバロメーターとされる設備投資は伸びていない。1ドル120円前後まで円安が進んでも大企業は海外で稼ぐ構造が定着しており、国内で工場を新たにつくることには消極的。公共事業は人手不足が深刻で資材も高騰、工事を増やそうとしても建設会社が対応できていない。一方で東京株式市場の日経平均株価は8日、6営業日続けて今年の最高値を更新。一時、7年4カ月ぶりに1万8000円を超えた。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 今日の記事には、今の日本の経済構造がよく表れています。2面の記事からポイントを整理します。

◆大企業はもうかるが中小企業は厳しい
 アベノミクスが描く経済の「好循環」は以下のようなものです。
日銀による金融緩和→ドル高円安→輸出に追い風→輸出向けの生産を増やすために国内に新工場をつくる設備投資が増える→雇用が増える→消費も増える
 
 この循環が「設備投資」のところでつまずいているのが今の状況です。安倍首相は「メーカーや経済界は、日本に投資しようと変わった。東芝は3000億円投資して日本に工場をつくる」と成果を強調。東芝、日産自動車など一部の製造業に、海外に移すはずだった製品の生産を国内で続ける動きが出ています。でも、設備投資は国内全体には広がっていないことがわかったわけです。大企業には過去最大の利益をあげる企業が相次いでいるのに、国内全体に広がらないのはなぜでしょうか?

 「モノづくり」が得意な日本は長い間、原材料を輸入して製品を輸出する「輸出立国」でした。ところが、2010年から2012年にかけて1ドル80円前後の円高が続いたため、国内でつくって輸出しても海外では割高でもうからないため、電機業界など多くの日本企業が海外に工場を建てて生産する海外進出を盛んに進めました。アベノミクスで「円安ドル高」に転じても、急には国内生産に戻せません。中小企業は、円安で原材料の値段が大幅に上がったため、かえって経営が厳しくなっているのです。

 日本と海外のお金の出入りを示す経常収支は10月、8334億円と4カ月連続の黒字でした。輸出入の差額を示す貿易収支は赤字が続いているのに経常黒字を保てるのは、日本企業が海外で稼いでいるからです。海外子会社から本社に戻す利益などを反映する「第1次所得収支」の黒字は、10月としては過去最大の2兆186億円でした。国内でモノをつくっている中小企業には恩恵が及ばない構造になっているわけです。

◆株価上昇でもうかるのは?
 日経平均株価は、2年前の安倍政権発足時と比べると、8000円近く上がりました。株高で恩恵を受けやすいのは外国人投資家です。国内の株式のうち、外国人が持っている比率は今年3月末時点で、初めて3割を超えたのに対し、国内の個人投資家は6年ぶりに2割を割り込みました。個人で株を持っている人は余裕のある富裕層に限られているため、一部高額品はよく売れても、円安などによる物価上昇で実質賃金は下がっているため一般庶民の生活は良くならず、むしろ苦しくなっています。
 
 アベノミクスは「トリクルダウン」(滴り効果)をめざしています。大企業や富裕層がもうかれば、雨のしずくが滴り落ちるように中小企業や庶民にも波及することを言いますが、まだしたたり落ちていません。安倍首相や与党はこれから好循環になると言い、野党は格差が広がったと主張しています。これからの景気動向はみなさんの就活の状況に直結しますし、衆院選は日本の経済について考えるいい機会です。基本的な構図を押さえたうえで、日々のニュースに接すると理解が深まりますよ。

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