言葉マイスター ナカハラハラハラ 略歴

2015年09月24日

就活とキャッチフレーズ・その3 ~「比喩」と「言葉のチョイス」

 「就活にキャッチフレーズを生かそう」企画、とりあえず最終回です。今回は具体的な付け方、というかいくつか「コツ」のようなものを示していきます。

 まずは過去2回のおさらい。

 ・人の関心(注意)を引く言葉
 ・短い(簡潔な)言葉

 この大前提はお忘れなく。このあたり、以前お話しした「見出し」と通じるところもあります。あえて長くすることでインパクトを与える、という裏技もなくはないですが(落語の「寿限無」みたいに)、上級編というかややリスキー。
 「見出し」と少し違うのは、必ずしも正確を期さねばならないわけではない、ということ。詳しくはこれから例示しますが、簡単に言うと多少は「盛って」もいい、いや「盛るべし」ということです。もちろん「ウソ」はNGですが。

 (1)比喩を使う

 比喩とは「何かにたとえて印象を強める」表現技法のことです。大きく分けて「直喩」と「隠喩」があります。ものすごくざっくり言うと、「~のようだ」「~に似ている」と表すのが前者、それを省くのが後者です。たとえば、あなたが運動系サークルのマネジャーとして、やるべき業務はもちろん、メンバーのプライベートにまで気を配り「まるで自分のお袋みたいだよ」と感謝された実績があるとしましょう。

 直喩:私はサークルのお母さんのような存在でした。 
 隠喩:私はサークルのお母さんでした。

 オススメしたいのは後者の隠喩です。前者よりインパクトがありますよね。あったかくて世話好きであり、包み込むような人柄を「お母さん」という言葉で端的に示しているのであり、実際の母親ではないからといって「ウソだ!」と怒られることはありません(笑)。

 「人の顔と名前を覚えるのが得意です」というより、「人間アドレス帳です!」と言ってみる。仮にちょっと通じにくかったとしても、「それってどういう意味?」と聞き返されたらしめたもの。関心・興味を持ってもらっているわけですし、そこでエピソードを一つ話す機会をもらえるわけですから。

 (2)「引っかかる」言葉を選ぶ

 面接官やESを読む人事担当に「ん?」と思わせないと、キャッチフレーズを付ける意味なんてありません。面接なら耳をそばだてさせ、ESなら目線を止める……。そういった言葉を探しましょう。つるっとした言葉ではなく、あえてゴツゴツした言葉を選ぶ。もしあなたが「積極性」を売りにしたいとき、「私の長所は積極性です」なんて言っても(書いても)1秒後には忘れられています。だったら……

 ・私は「ミスターグイグイ」です。
 ・寝ているときもアクティブです。

 「何のこっちゃ(笑)」と思わせたら勝ち。

 逆の言葉をくっつけるのも効果的です。

 ・冷静な情熱家です(熱量をもって臨むけど、一歩引いた視点も忘れない)
 ・悲観的な楽天主義者です(リスクは考えるけど、最後にはえいやっと挑戦する)
 ・裏方で「主役」を務めてきました(マネジャーひと筋、というより効果的)

 ただし、決して忘れてほしくないことがあります。人事担当者は「キャッチフレーズそのものを評価するのではない」ということ。もちろん、センスの良い(インパクトのある)ものを出せる、というのはそれだけで一つの才能であり考慮されるでしょう。しかし今まで口を酸っぱくして言ってきたように、「ふさわしい日本語」もこのキャッチフレーズも「あなた」をプレゼンする武器のいちパーツに過ぎないのです。

 キャッチフレーズで「つかんだ」後、どれだけ具体的なエピソードを語れるか。そこに「自分」を投影できるか。レストランで言えば、清潔な外装や明るい店員がキャッチフレーズ、おいしい料理があなた自身です。店に来てもらったお客に、いかに満足して帰ってもらえるか、また来たいと思わせるか。
 いくらイケメン・美人の店員さんがいても、まずい料理を出す店には二度と行きたくありませんよね。それと同じです。

 そう言えば昨年、日清食品のカップヌードルのテレビCMで、日本の色んな世相をちょっと面白おかしく風刺した「SURVIVE!」シリーズというものがありました。その第4弾「就職氷河期編」では、文字どおり実際の氷河をリクルートスーツで凍えながら進む就活生たちの前にシロクマが現れ、男子就活生が「圧迫面接!」とおびえます。そんな中、女子就活生が自己PRとして

 「私は、かめばかむほど味の出るスルメのような人間です!」

 と言い放つというものでした。いや、シロクマに「かめばかむほど」はアカンやろ、という苦笑に加え、「スルメのような」といういささか手あかのついたたとえを使ってしまう滑稽さをうまく描いていました。

今週のおまけ ~大声で叫べば、ダイヤモンドになる。

 上記(2)に書いてもよかったんですが、長くなるのでおまけとからめて。

 「異種の言葉をぶつける」というのも印象的です。カタカナばかり/漢字ばかり/平仮名ばかり、では埋没してしまう。英語と日本語をうまく交ぜるのもそう。ルー大柴さんのしゃべりや文章、暑苦しいけど引き込まれるでしょう? 「一緒にやろう」より「トゥギャザーしようぜ」の方が絶対楽しい(笑)。

 AKB48の楽曲タイトル……というかそれをつける秋元康さんは、この達人だと思います。「大声ダイヤモンド」「希望的リフレイン」「永遠プレッシャー」「重力シンパシー」「涙サプライズ!」「Everyday、カチューシャ」……。

 キャッチフレーズとはやや違うかもしれませんが、それぞれありふれた別の言葉を組み合わせることで、絶対に忘れられないものが生まれる。素人が同じようにはなかなかいかないかもしれませんが、頭の片隅においておくと応用がきくかもしれません。