あきのエンジェルルーム 略歴

2016年09月29日

女の人生は何度でもおいしい!?(最終回) ♡Vol.72

 いつも心にエンジェルを。

 今日はみなさんに謝りたいことがあります。これまでこの連載では、結婚や出産といったライフイベントをきっかけに仕事との両立が大変になったとしても、安易に辞めないで、というメッセージを発信してきました。そのためにも、労働者としての立場が比較的守られている「正社員」にこだわってほしい、「正社員」という立場を得られたら、できるだけ手放さないでほしい、と。
 そんな私が、今回、朝日新聞社を退社することになりました。言行一致せず、本当にごめんなさい。何か粗相をした、ということではありません。子育ての一番しんどい時期も過ぎました。なのに、なぜ辞めるのか。

 一言でいうと、「♪幸せは~、歩いてこない。だ~から歩いていくんだね♪」(「365歩のマーチ」by水前寺清子)という心境になったからです。わからない人はお母さんに聞いてください。つまり、何かいいことないかなあ、とただ待っていても、いいことは降ってわいてきたりはしないということです。

 あさがくナビ副編集長というお役目を仰せつかって2年ちょっと。たくさんの大学生、主に就活生との出会いがありました。自己分析、エントリーシートのまとめ方、業界研究のやり方、 面接での振る舞い方、みなさんの就活に役立てればいいなあ、と思いながら、私なりにお話ししてきました。
 そんなときに、とても親しくしていた方が相次いで亡くなりました。

 人生は有限です。

 いまの仕事もとてもやりがいのある仕事ですが、サラリーマンには異動がつきもの、一生この仕事を続けられるわけではありません。振り返ると、ここ6、7年で、私は5回も職場を異動しています。一部署で1、2年ペースです。「置かれた場所で咲きなさい」がモットーなので、どの部署でも自分なりにがんばってきましたが、新しい仕事を覚え、新しい人間関係を頻繁に結び直すことは40歳を過ぎると(過ぎなくても?)結構しんどいものです。もちろん希望の部署にずっといられる幸せな人もいるでしょうが、そういう人は一握り、会社員を続けるということはきっとそういうこともひっくるめて耐えることなのです。
 中でも女性は出産によってマミートラック(働き続けることはできるけれど、やりがいや出世などは望めない職場ばかりに配置されること)を走らされたり、時短勤務をすることで肩身の狭い思いをしたり、男性中心の会社で、実力を正当に評価されなかったり、ストレスに苦しむ人は少なくありません。

 同世代で働き続けている独身の友人の一人は、希望でない部署をたらいまわしにされて、うつ状態になりました。また別の友人は、乳がんを患い、またある友人は全身脱毛症になり、ウイッグが手放せない日々を過ごしています。ただし、体をこわしても、正社員でいれば、いろんなセーフティーネットがあります。友人たちは体の不調をだましだまししながら、懸命に仕事を続けています。

 でも、それが幸せか、というと、どうでしょうか。正社員になって、一見、「勝ち組」に見えても、人生はそれで終わりではないのです。

 私自身も、就活生のみなさんと同じように、自分の人生のプライオリティーの中で、何が一番か、考えてみました。遅れてきた人生の棚卸しです。そうしたら、自分の本当にやりたい事が、あぶり出しの文字のように、クッキリ見えてきたのです。ただいま48歳。女性の平均寿命程度まで運良く生きられるとしても、好きなことに全力で取り組むことができる時期を考えたら、そう長くはありません。

 私は社内転職といってもいいぐらい、畑違いのさまざまな部署を経験していますが、転職経験はなく、会社を辞めるのは初めての経験です。これからは健康保険、国民年金、すべて個人で負担していかねばなりません。退社にあたって詳しい説明を受けて、これまでずいぶん会社に守られてきたのだなあ、と痛感しました。それでも、辞めたい、という気持ちは揺るぎませんでした。
 退社と離婚は少し似ています。一瞬でも、「この人と別れたい」あるいは「別れてもいい」と思ってしまった相手と添い遂げるのはなかなか難しいのです。

 就職も結婚も出産も、どれも女性の人生のゴールではありません。そのときどきの立場によって人生の優先順位も幸せの定義も変化するものです。そして、いまはどうあれ、人生の一発逆転のタネはいろんなところに転がっているのです。
 就活がうまくいかなくて悩んでいる人、希望の職種で正社員になれず悔しい思いをしている人、人生には何度でも転機があります。イジメやパワハラに苦しんでいて、いまは目の前が真っ暗でも、「生きていてよかった」と思える瞬間は必ずあります。そして、最後の最後、まさに棺桶に入るときに「楽しい人生だった」と言える可能性は無限にあるのです。とりあえず、いま、できるだけのことをして、自分なりに最善の選択をしたと思えたら、もうそれで十分です。

 どうか自分が納得できるまで悩みぬいてください。そして、決めたらその道を迷わず進んでください。そして、いつか「違う」と思ったら、そのときまた考えればいいのです。
 私の好きなカントリーミュージックのディーバ、ドリー・パートンの名言を最後に贈ります。

「あなたの人生を代わりに生きてくれる人はいないわ」

 女性がもっともっと生きやすい社会をつくること、そして“エンジェル企業”の発掘はライフワークとして続けていきます。

 またどこかでお会いできる日まで、さようなら、お元気で。