あきのエンジェルルーム 略歴

2015年03月12日

会社人間からイクボスへ! “五つ星”エアラインを支える人情派役員 ♡Vol.27

 いつも心にエンジェルを。

 世界に7社しかない、“5つ星エアライン”。2013年に英国スカイトラックス社が運営・格付けする「エアライン・スター・ランキング」で日本勢初の「ファイブ・スター」に選ばれた全日本空輸(ANA)を今回は紹介します。
 約15000人いる正社員のうち女性が52.9%、半数以上を占めます。「経験値の高い女性社員に長く働いてほしい」と2007年には人事部にワークライフバランスやダイバーシティーを推進するための部署「いきいき推進室」を作りました。
 当時は2010年に羽田空港・成田空港の発着枠の拡大を控え、優秀な人材の確保が企業命題でもあったのです。
 2008年4月には厚生労働省が実施するワークライフバランス推進モデル企業として手を挙げ、日本を代表する企業10社に選ばれました。同社が特に注力したのが、①労働時間の短縮、②多様な働き方の推進、③ワークライフバランス推進のための啓発活動の3本柱です。
 さらに同社は2014年12月、イクボス企業同盟に創立メンバーとして加盟しました(♡Vol.16も読んでね)。背景には、元祖「イクメン&イクボス」として知られる役員の存在がありました。

 その人が同社執行役員で人事部長、ANA人財大学長も兼務する國分(くにぶ)裕之さんです(下写真)。國分さんも、かつては8時半に出社したら22時ぐらいまで働く、“会社人間”の典型だったといいます。ところが、整備部門で課長として働いていた2006年夏、奥様が病に倒れ、生活が一変しました。
 当時は40代後半の働き盛り、高校3年の男の子、中学3年の女の子がいました。しかし、家事全般は妻に任せきり、料理もしたことがありません。子の世話はもちろん、入院中の妻の世話もあります。頭が真っ白になり、会社を辞めるという選択肢もチラついたといいます。
 國分さんの場合は、現状を報告した上司が「しっかり支えるから全部がんばれ」と言ってくれ、早朝に出勤し、代わりに定時退社することで、仕事と家庭を両立することができたそうです。残念ながら奥様は50日間の闘病の末、亡くなられましたが、國分さんは、その後も下のお子さんが高校を卒業するまでの3年とちょっとお弁当を作り続けるなど、イクメンに変身しました。

 「会社人間はプライベートのイレギュラーに弱い。私の場合は妻の病気でしたが、介護だったり、ケガだったり、他のどの社員にだって、突発的な生活の変化が起こりうる。こういう『いざというとき』に、いかに柔軟に対応できる組織をつくるか、社員自身も、家庭人の部分をいかに保っておくか、その大切さを身をもって経験しました」と國分さんは振り返ります。
 
 その後、國分さんはグループ会社である全日空商事の総務部長、2010年に全日空本社の人事部副部長を経て、2012年から人事部長になり、イクボスとしての本領を発揮していきます。
 ワークライフバランスを整える制度は充実しています。時短勤務制度はもちろんありますが、フライト等で時短勤務を取得できない客室乗務員(CA)職には、子どもが小学3年生まで公休以外に「育児日」(月に3日まで無給の休日)などがあります。2011年には、テレワーク制度も導入され、子の有無はもちろん、男女かかわらず、多様な働き方ができるようになりました。女性管理職比率は2013年度末で9.8%ですが、2020年度までに15%という数値目標も掲げています。2014年にはANAをはじめ、グループの取り組みが評価され、ANAホールディングスが女性活躍推進にすぐれた企業として空運業初の「なでしこ銘柄」に選定されています。なでしこ銘柄は、女性の活躍推進に積極的で、かつ財務面も健全な上場企業を、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定しています。
 制度だけでなく運用の工夫もしています。総合職事務職は入社10年以内に海外配置も経験します。ライフイベントの集中しがちな年齢になる前に、いろんなチャンスを提供しているのです。地域振興プロジェクトなど、地方に社員を派遣する機会もあります。ほとんどは「手上げ」方式、公募制です。
 「福利厚生も充実していますが、それ以上に、やる気のある人、自ら手を挙げる人のチャレンジ精神を受け止める制度が整っているということに注目してもらいたいですね」と、いきいき推進室長の槙田あずみさん(左写真)は言います。
 
 制度という入れ物があっても、同僚や上司に遠慮して使いこなせなければ何にもなりません。同社には、風通しのいい企業ならではの取り組みがあります。
 
 それが「グッドジョブカード」(写真下)です。社員が社員を褒めたいときに渡します。15年ほど前に若手中心のプロジェクトから生まれた社内慣習だそうですが、2011年には、全社的にカードのフォーマットを揃え、WEBでも贈れるようにしました。
 「旅客として搭乗したときの機長のアナウンスが良かった」「ギャレー(機内のキッチン)の片づけが完璧で使いやすかった」「コピー機の前に落ちているゴミを拾ってさりげなく捨てていた」など、理由はさまざまです。社内のだれにでも贈ることができます。

 その場かぎりのことではなく、ポイント制を導入し、カードをもらった人には3ポイント、贈った人にも1ポイント付与しています。ポイントに応じて、ブロンズ、プラチナ、ダイヤモンドとマイレージカードのようにクラスが上がり、バッジがもらえます。メッセージのやりとり1件につき1円を福祉団体に寄付する仕組みになっていて、平均して月に6000件程度、社内を行き交っているそうです。

 いきいき推進室長の槙田さんは1987年に国際線CAとして入社して以来、2011年4月に人事部に来るまでは現場一筋でした。

 「お客様からの評価も大切ですが、同僚に褒められるというのも、『ちゃんと見ていてくれたんだ』とうれしいものです。がんばっている人を見つけて応援しようという文化が根付いているからこそ、大変なときは支え合おうと自然に思えるんです」(槙田さん)
 
 褒められて心がすさむ人はいません。みなさんも周囲を見渡して、ぜひ”グッジョブ”の種を見つけてください。アラ探しでなく、長所探しがとても得意というのは就活でも立派な自己PRになりますよ。

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