2014年05月12日

ひとごとじゃない!中国vsベトナムの領有権争い

テーマ:国際

ニュースのポイント

 中国がベトナム沖の南シナ海で約80隻の公船をひきつれて石油の掘削活動を始め、これに抗議するベトナムの船と衝突して大きな国際問題になっています。南の海の出来事ですが、日本にも無関係ではありません。

 今日取り上げるのは、1面トップの「南シナ海『自制を』/ASEAN首脳 中国牽制(けんせい)へ一致」と、総合面(2面)の「時時刻刻/ASEAN 対中国結束/ベトナム『深刻な脅威』 比『国際法で解決』」です。
 記事の内容は――東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議で、石油掘削をめぐって南シナ海で中国がベトナムの船と衝突している問題について、「全当事者に自制と武力不使用を求める」とする首脳宣言を採択した。独自の管轄権を主張し、資源開発を進める中国に対して一致結束して牽制した形だ。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

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南シナ海の地図

 中国とベトナムの船が激しくぶつかり、けが人が出ている映像がテレビのニュースでたびたび流されています(朝日新聞デジタルでも動画を見ることができます)。そもそもどんな問題で、いま何が起こっているのでしょう。

 豊富な天然資源が眠るといわれる南シナ海は、これを取り囲む中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を主張しています。地図を見ると、各国が権益を主張するラインが重なり合っていることがよくわかりますよね。第2次世界大戦時には日本が一帯を占拠していましたが、日本の敗戦後に領有権争いが始まりました。中国とベトナムは1974年に西沙諸島で海戦、1988年には南沙(スプラトリー)諸島で武力衝突があり、いずれも勝利した中国が実効支配しました。フィリピンは1995年に南沙諸島の環礁を中国に奪われ激しく対立、国連海洋法裁判所に仲裁を申し立てています。ASEANと中国は2002年に平和的解決をめざす行動宣言で合意し、具体的な行動規範づくりに取り組むとしましたが、その後も中国は「9段線」と呼ぶ独自の境界線を根拠に全域での管轄権を主張。軍事力や経済力を背景に監視船を派遣するなど、実効支配を強めてきました。

 関係国の立場を整理します。
【中国】中国の国営通信などによると、「9段線」は1947年に中華民国(当時)が引き、中国共産党が受け継いだといい、「歴史的に形成された中国の権利」と主張しています。しかし、9段線は国際法では説明できず、国際的には認められていません。
【ASEAN】1面記事の図にもあるように、ベトナム、フィリピンは領有権争いで中国と激しく対立していますが、中国から多額の経済援助を得ているカンボジア、ラオスは中国に近い立場にあります。10カ国は一枚岩ではなく、首脳宣言も中国を名指しで非難することは避けました。
【米国】アジア重視を掲げる米国は、中国を強く非難しています。今の中国の行動を容認すれば、国力を背景にした南シナ海の実効支配がさらに進み、航行の自由や米海軍の活動に影響が及ぶことを強く懸念しています。ウクライナ問題やシリア情勢への対応に苦慮する米国には、アジアの海で新たな火種を抱えるのは避けたい意向もあります。先にオバマ大統領がフィリピンを訪問し新軍事協定を結んだのも、中国に対する牽制です。
【日本】境界線で対立したまま中国が一方的に資源開発を進めるのは、日本との間で長年の懸案となっている東シナ海のガス田開発も同じです。日中間では2008年、ガス田の共同開発に乗り出すことで合意しましたが、尖閣諸島沖で中国漁船が日本の巡視船に衝突する事件が起きた2010年以降は条約締結に向けた交渉が中断したまま。中国はその間にも、自らの管轄権があると主張する範囲で、ガス田開発に向けた動きを見せており、日本政府は中国側に抗議しています。菅官房長官は今回の南シナ海での摩擦について「一連の挑発的な海洋進出の一環だ」と批判しました。

 国際関係の緊張は、世界の経済を左右し、日本の経済、企業活動にも波及します。日中間の尖閣問題にも影響が及ぶ可能性がありますし、これだけの国際問題になると面接でも話題に出るかもしれません。ことの成り行きを注目してください。

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