ニュースのポイント
工業製品を海外に輸出してもうけてきた日本の企業の稼ぎ方が変わっています。海外に工場をつくるなど、直接出て行って「海外で稼ぐ」ようになってきました。「経常収支」から、日本企業の方向性を考えます。
今日取り上げるのは、総合面(2面)の「いちからわかる! 経常黒字が減ったってどういうこと?」です。関連記事が経済面(8面)の「日本の稼ぎ方 変調/経常黒字、初の1兆円割れ」に出ています。
記事の内容は――財務省が発表した「2013年度の国際収支」によると、海外とのモノやサービスの取引や投資状況を示す「経常収支」の黒字は7899億円となり、1兆円を割り込んだ。24兆円を超える黒字だった2007年度からわずか6年で黒字額は30分の1に減った。「経常収支」のうち、輸出から輸入を差し引いた「貿易収支」の赤字が急速にふくらみ、初めて10兆円を超えたのが要因。原発事故で全原発が止まって火力発電に使う燃料の輸入額が増えた一方、輸出は伸び悩んでいる。それでも経常黒字なのは、日本企業の海外でのもうけなどを反映した「所得収支」が黒字だからだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
日本は工業製品を海外に輸出して稼ぐ「輸出立国」。学校でこう習ってきたと思います。経常黒字の急減は、そのモデルが変わってきた、成り立たなくなってきたことを示しています。
まず、言葉を整理します。
モノを輸出入したり、海外に工場をつくったりすると、日本と海外との間でお金のやりとりが生じます。その収支をまとめたのが【経常収支】で、日本がどう稼いでいるかなどを示します。黒字であれば、輸出や投資の稼ぎで海外から日本にお金が入ってくる状態です。経常収支は以下の項目に分けられます。
・輸出額から輸入額を引いた【貿易収支】
・海外への投資によるもうけから、海外からの投資によるもうけを引いた【所得収支】
・主に外国人旅行者が日本で使ったお金から日本の海外旅行者が外国で使ったお金を引いた【サービス収支】
・主に途上国支援に出したお金を示す【経常移転収支】
グラフを見てわかるように、2008年のリーマン・ショックと2011年の東日本大震災の影響で円高が進み、自動車など日本製品の海外での輸出競争力は弱まりました。このため、日本企業は工場をつくるなど海外進出を進め、海外投資による「所得収支」は増えました。一方で2013年からはアベノミクスの金融緩和などで円安が進み輸出競争力は回復したものの、メーカーの多くは海外に生産拠点を移しているため、輸出はそれほど増えていません。火力発電に使う燃料やスマホなどの輸入が増えて「貿易収支」の赤字が一気にふくらみ、かろうじて「経常収支」の黒字を維持している状況です。
経済面の記事には「過去3年ほどの円高で苦しみ、みな海外に出て行った。今さら引き返すわけにはいかない」(スズキの鈴木修会長兼社長)との言葉が出ています。記事にはトヨタ自動車、ホンダ、日立製作所、パナソニックなど日本を代表する自動車・電機各社の対応が紹介されています。関連する部品メーカーなどの海外進出も加速しています。就活には、企業ホームページにある「IR情報」が役立ちます。志望する企業の貿易や海外進出の実績などを調べてみましょう。
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