2025年04月17日

就活エージェント、強引なエントリーすすめる例も 活用法を考えよう【就活のキホン】

テーマ:就活のキホン

  学生個別に就職活動を支援してくれる「就活エージェント」サービスが、近年普及してきています。学生が見落としがちな隠れた優良企業を紹介してくれたり、細かな相談に乗ってくれたりするなどメリットもありますが、一方で強引に選考エントリーをすすめてきたり、いわゆる「オワハラ」(就活終われハラスメント)をしてきたりするエージェントもいる、という問題も指摘されています。どうすれば就活エージェントとうまくつきあえるのか、考えてみました。(編集部・福井洋平)

(写真はすべてiStock)

「効率的に就活すすめるため」「面接練習もしてくれる」

 関係者によると、かつて就活エージェントは就活後半戦の夏以降に入ってから求人に苦しむ会社が多く利用し、同じく就活に苦戦している学生の獲得につなげていました。コロナ禍以降に人手不足が加速化、新卒学生の採用に悩む企業が増えた結果、いわゆる優良企業の利用も多くなりました。エージェントの動き出しも早くなり、学生の利用も増えていったのです。

 リクルートが運営するウェブサイトのアンケートでは、2024年卒の内定者のうち29.0%が就活エージェントを利用したと回答しています。また、その理由としては、

・公務員試験と並行するなどして、就職活動を効率的にすすめたかったため
・客観的にみてどの企業が合っているか知りたかったため
・スカウト機能がついていて、面接練習もしてくれるため

 といった回答があげられています。

他企業の内定辞退をしつこく迫ってきた

 さまざまな企業が就活エージェントのサービスを展開していますが、その内容は玉石混淆、いいものもあれば悪いものもあるようです。昨年12月には、ある大手人材会社のエージェントが紹介した企業の内定を得た学生に就活の打ち切りを求めるような発言をした、と報じられました。

 就活ニュースペーパーの「26年卒学生の就活ルポ」でも紹介しましたが、ある私立女子大学の学生は「就活エージェントにはあまりいい思いはしなかった」と語っています。たとえばあるエージェントの場合、そこが紹介してきた企業の説明会を聞いて選考に進むことは辞退したいとエージェントに連絡したにもかかわらずその企業には伝わっておらず、勝手に選考に参加することになっていたそうです。後日エージェントから「なぜ選考を受けていないのか」と連絡が来て、抗議したのですが謝罪はありませんでした。

 あきらかに自分に合わないような会社を連続してすすめてくるエージェントもあったそうです。断ると「自分たちのすすめる企業を受けないとか、ありえない」という圧力をかけてくるとも言います。この学生はエージェントを通さずある大手企業に内定しましたが、それを理由に今後の選考は辞退するとエージェントに伝えたところ「その大手企業で本当にいいのか」としつこく辞退を迫ってきた、とも振り返ります。

学生が内定したら紹介料を企業からもらう仕組み

「逆に、大手企業に内定をとったと伝えたらそれまでとはがらっと対応が変わって良くなったところもありました。人を見るといいながら、実態はそういう職歴や学歴しか見ていないじゃないかと感じて気分が悪かったですね」(この学生)

 また、学生時代に部活やサークルなどの活動に力を入れ、就活は効率的に行おうと思ってエージェントを利用したところ、入社した会社がブラック企業だった――という例も実際にあるようです。

 なぜこのような、学生に不満をもたれるようなエージェントが出てきてしまうのでしょうか。ひとつの要因は、エージェントのビジネスモデルにあります。一般的には、エージェントは企業に学生を紹介し、その学生が入社したら紹介料を企業側からもらうというビジネスモデルです。多くの場合、内定時に半金が入り実際に就職した段階でもう半金が入るという仕組みになっているため、就活エージェントは売り上げを確保するために学生の内定辞退に動きがちになる――ということなのです。売り手市場となって、いまはこの紹介料の単価もかつての倍程度になっているといいます。それだけ、エージェントの力が入ってしまうということも考えられます。

気づかなかったがマッチしそうな企業紹介するのがいいエージェント

 危険なエージェントサービスを見分けるポイントはあるのでしょうか。学情が展開している新卒エージェント事業「Re就活キャンパスエージェント」を運営する学情のキャリアアドバイザー山下大輔さんは、「性急に意思判断を迫ってくるようなエージェントは、危ないと思った方がいいです」と語ります。

 Re就活キャンパスエージェントでは、たとえば最初の面談で企業をいきなり紹介するようなことは「絶対にしない」と山下さんは語ります。

「本来、エージェントは学生の特性を理解したうえで、それにあった企業を紹介するのが仕事です。学生が興味をもっている業界や企業をそのまま紹介するだけではダメで、学生が思いつかなかった、気づかなかったが本人にマッチしそうな企業を紹介することにエージェントの意義があります」

 特に学生の場合、知名度や自分の興味だけで就職先を選んでしまいがちです。学情は既卒者の転職サービス(「Re就活」)も手がけているため、そういった軸で就活先を選んだ結果はやばやと転職することになった人もたくさん見てきました。だから新卒就活のときに、20代でどういう自分になっていくのか、どんなスキルや強みを持っていくべきかというキャリア観を形成し、それに沿った就活をすることが大切だと山下さんは言います。その手助けをするのが、エージェントの役割なのです。このためRe就活キャンパスエージェントではまず学生を「知る」ことに時間をかけ、さらに面接から成約(内定)まで何度もウェブや電話も含めて接触するそうです。

 冒頭にも述べたように、就活エージェントには個別の相談に乗ってもらえたり、自分の思いも寄らなかった企業を紹介してもらえたりといったメリットがあります。タイパ(タイムパフォーマンス)的にもよさそうですが、エージェント側がタイパを意識していきなり企業を紹介してきたり、面接機会が少なかったりするようなら黄色信号です。内定まで3回程度の接触しかないエージェントもいるそうですが、その短い期間で本当に自分のことを理解し自分にあった企業を紹介してくれるのか、考えてみたほうがよさそうです。困ったエージェントに当たったら、大学のキャリアセンターに相談するなどしてみましょう。

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