2014年11月26日

急拡大する再生医療市場 最新情報で企業研究!

テーマ:医療・健康

ニュースのポイント

 細胞や組織を培養して体に移植する「再生医療」を早く安全に患者が受けられるようにする二つの法律が施行されました。経済産業省によると再生医療の市場規模は、2012年に90億円だった国内市場が2030年に1兆円、2050年には2兆5000億円に、世界市場は2030年に12兆円へと急速に拡大するとみられています。国内外の多くの企業が動き始めています。

 今日取り上げるのは、総合面(7面)の「再生医療の製品化 加速/安全性確保など2法施行/有効性『推定』段階で承認/培養や加工 企業に委託も」です。
 記事の内容は――薬事法を大幅改正して施行された「医薬品医療機器法」は、人の細胞を加工したものなどを再生医療製品と定義。安全性が確認されれば、条件、期限付きで早期承認する。早期承認で治験の費用を抑えられるため企業の参入のハードルが下がり、実用化が後押しされると期待される。患者もより早く治療を受けられる。「再生医療安全性確保法」は、医療機関内で行うのが一般的だった細胞の培養と加工を企業などに外部委託できるようにした。日本は再生医療の研究水準は高いが、実用化は欧米や韓国より遅れている。医薬品の受託製造事業を世界で展開するバイオ企業ロンザ(本社・スイス)の担当者は「日本は大きな市場。ビジネスチャンスに絶対なる」と語った。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 再生医療といえば、京都大学の山中伸弥教授らがつくりノーベル賞を受賞した「iPS細胞」が最初に思い浮びますよね。iPS細胞の世界初の臨床手術は今年9月に理化学研究所などのチームが成功させましたが、まだ臨床研究の初期段階で、iPS細胞を使った治療が普及するのは「10年以上先」とも言われています。iPS細胞のような万能性はなくても、組織や臓器を細胞から再生させる医療はすでに実用化の段階を迎え、企業が参入しています。

 今日の記事に登場した3企業の取り組みをまとめます。
◆医療機器大手「テルモ」(東京都渋谷区)=自分の足の筋肉の細胞をシート状に培養して病気の心臓に貼り付ける「細胞シート」を再生医療製品として承認申請
◆バイオベンチャー「テラ」(東京都港区)=がん免疫療法で用いる細胞の早期承認をめざし、2015年に治験を始める計画
◆「タカラバイオ」(大津市)=滋賀県内に細胞加工ができる工場のような施設を10月に稼働。延べ床面積6500平方メートルと世界最大級。病院などから患者の細胞を受け取り、注文通りに手を加えて培養し受注元に販売する

 再生医療など最先端の医療技術は、安倍政権の成長戦略でも重要テーマの一つです。さらに視野を広げて考えると、再生医療に限らず医療関連の分野は、技術の進歩と進む高齢化でこれからますます市場が拡大することは間違いありません。少子高齢化で市場が縮む業界が多い中、むしろ高齢化が追い風になる珍しい業界です。その分、国際競争が激しい分野でもあります。さらに、今回の法律にも関係しますが、常に「安全」が大前提となる世界であることも忘れてはいけません。医療機器、医薬品などの業界をめざすみなさんは、こんな特徴を意識したうえで、新聞記事などで最新ニュースをチェックしてくださいね。

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