ニュースのポイント
橋やトンネルなど高度成長期に造られたインフラ(社会資本)はどんどん古くなっていますが、少子高齢化で点検を担う人手は足りません。そこで頼りになるのが、人に代わって点検する「インフラロボット」です。
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「インフラ点検 ロボ台頭/老朽化・人手不足で活躍の場/市場規模 大幅拡大へ」です。
記事の内容は――橋やトンネルにできたひびを探したり、たたいて内部の様子を調べたり、インフラを点検するロボットが次々生まれている。深刻な人手不足に加え、高度成長期に造られたインフラの老朽化が進んで点検が追いつかなくなる恐れがあるため、国が開発支援に本腰を入れ始めた。国土交通省がインフラロボット技術を公募したところ、企業や大学などから143件の応募があり101件が実証実験の対象に。長いアームの先のカメラで橋の裏側を点検、トカゲのように壁に張り付く、高速で走りながら瞬時に壁の傷を発見……とタイプは様々。人が点検するには橋の下に足場を組む必要があり費用も時間もかかる。建設業は若い人に敬遠される傾向が強く高齢化が進む。建設経済研究所の試算では就業者数は2025年には12年より41.9%少ない240万人まで減る可能性も。一方、コンクリートの耐用年数は50年ほどで、その後は特にきめ細かい点検・補修が必要。全国には70万の橋、1万のトンネルがあるが、1950~70年代の高度成長期に造られたものが多く、10年後には橋の4割、トンネルの3割が築50年以上になるといわれる。それだけにインフラロボットは有望な成長産業。経済産業省によると、インフラロボの市場規模は2015年の216億円から、20年には1038億円に拡大する見通しだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
2012年12月末に中央自動車道・笹子トンネルで天井が崩れ落ち9人が亡くなった事故は覚えている人が多いと思います。国交省が全国の市町村のインフラ点検について調べたところ、8割が遠くから眺める「遠望目視」で済ませていました。同じようなことが起きる心配は全国のあちこちにあり、今後はさらに急速に老朽化が進みます。国交省は自治体に5年に1度の「近接目視」を義務づける方針ですが、点検のコストは上がり、技術者も不足しており、自治体には大きな負担です。そこで日本が得意なロボットに期待がかかるという話です。
今日の朝刊の8面には、ソフトバンクの人型ロボ「ペッパー」が好みのコーヒーを薦めてくれるサービスをネスレ日本が始めるという記事が載っています。私たちの暮らしの身近な場所から、インフラ整備の裏方まで、ロボットが活躍する舞台はどんどん広がりそうです。ロボットメーカーの動きに注目してください。
今日の記事でもう一つ注目すべきは建設業界です。政府、民間を合わせた建設投資は1990年代以降右肩下がりでしたが、東日本大震災の復興需要もあり、2012、13年度と2年連続の増加。14年度は少し減りますが50兆円弱という水準です。2020年東京五輪、東京―名古屋間のリニア新幹線建設も決まり、建設業界は活況が続いています。記事からは、こうした新たな需要だけでなく、老朽化するインフラにもビジネスチャンスがあることがわかります。橋や道路を造り直したり、修復、補強したりといった需要も増えるはずです。
インフラの老朽化は日本社会全体にとって大きな課題です。古くなったものをどう維持して、安全を守っていくのか。古いからこそのビジネスチャンスはないか、考えてみてください。
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