ニュースのポイント
日本の企業では、ずっと働いてきた人が社長になる「生え抜き人事」が主流ですが、異業種の有名企業から転身する「プロ経営者」も増えています。そもそもトップ人事って、就活に関係あるの?
今日取り上げるのは、経済面(6面)の「異業種渡る『プロ』社長/実績に期待 徐々に存在感/外部登用 日本は3%」です。
記事の内容は――実績やリーダーシップを買われて、異業種から社長に起用される外部登用は日本に根付くのか。コンビニ大手ローソンの玉塚元一社長は、「ユニクロ」のファーストリテイリングで3年、ロッテリアで4年トップをつとめた。米アップルコンピュータ(現アップル)日本法人から日本マクドナルドのトップに転身した原田泳幸氏は6月、また畑違いの通信教育最大手のベネッセホールディングス(HD)の会長兼社長に就任する予定。4月に資生堂社長となった魚谷雅彦氏は、日本コカ・コーラでの「マーケティングのプロ」という実績を見込まれた。米経営コンサルティング会社の2013年の調査によると、新任トップを外部から招いた企業の割合は米国(カナダを含む)23%、西欧25%に対し日本は3%。トップが他社での業務経験がある企業の割合は日本が15%で、米国の83%、西欧の74%を大きく下回った。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
記事の5人のほかにも有名な外部登用のトップがいます。
◆数土(すど)文夫氏(73)川崎製鉄→JFEスチール→東京電力
◆立花陽三氏(43)メリルリンチ日本証券→東北楽天ゴールデンイーグルス
◆土居健人氏(56)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント→リーバイ・ストラウス ジャパン→トリンプ・インターナショナル・ジャパン
◆村井満氏(54)リクルート(現リクルートホールディングス)→リクルートキャリア→Jリーグチェアマン
◆樋口泰行氏(56)日本ヒューレット・パッカード→ダイエー→日本マイクロソフト
◆稲盛和夫氏(82)京セラ→第二電電→日本航空
欧米に比べればまだまだですが、この数年、外部登用が目立ちます。一部の企業をのぞけば、経営が大きく傾いたわけではないのに、なぜ外部登用なのでしょう。
ベネッセの社長人事については、3月28日の今日の朝刊「少子化、海外、デジタル…ベネッセにみる日本企業の課題」でも書きました。少子化で進研ゼミなどの会員数が減る中、海外事業とデジタル事業に活路を見いだしており、アップルとマクドナルドの経験でその両方に強い原田氏の手腕に期待しての登用です。今日の記事でベネッセの福武総一郎会長は「価値観や環境が変化する中、変革の体験を持ったリーダーに(経営を)お願いするのがいい」と語っています。外資系企業の経験者をトップに招く会社が多いのも同じ事情でしょう。
資生堂は、業績悪化でテコ入れを図った後の社長人事で「新しい人材を登用し、攻めに転じる時期」との判断です。グローバル化で先行きが不透明な時代だけに、他の企業も過去の成功体験に縛られがちな生え抜き人材より、しがらみのない外部人材に任せた方が社内改革が進み成長できると考えたわけです。
社長が代われば会社の方針も大きく変わることがあります。原田氏はマクドナルド社長に就任早々「新しいバスに乗れない者は去れ」と過去の経営体制との決別を宣言。不採算店の大量閉鎖など構造改革を進める一方、「100円マック」「マックカフェ」などの新路線で業績を改善しました。トップが交代した会社の社員は経営方針がどうなるか目を離せませんが、その会社を志望する就活生も社長の言動に注目してください。
今日の同じ経済面「新トップ2014」ではイトーヨーカ堂社長になった戸井和久さんを紹介しています。戸井さんは「青果の仕入れ一筋30年」という生え抜き社長です。朝日新聞の記事データベース「聞蔵Ⅱビジュアル」で「新トップ2013」と検索すると18人、「新トップ2014」は19人が登場しています。こうした記事で新社長の考え方や方針を調べてみましょう。
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