ニュースのポイント
老舗出版社「角川書店」で知られるKADOKAWAと、新興ネット企業ドワンゴが経営統合することになりました。豊富なコンテンツをもつ従来型のメディアと、動画配信に強いIT企業の統合は、今後の新旧メディアの再編の引き金になるかもしれません。
今日取り上げるのは、1面の「角川・ドワンゴ 10月統合/出版・ネット メディア再編」です。総合面(2面)の「時時刻刻/新旧メディア『次の一手』/統合効果は未知数」には関連記事が載っています。
記事の内容は――KADOKAWAと「ニコニコ動画(ニコ動)」のドワンゴが今年10月に経営統合すると発表した。持ち株会社をつくり、両社が傘下に入る。KADOKAWAが持つ書籍や映画、ゲームなどの豊富なコンテンツ(情報の中身)を、国内外で約3900万人の会員(うち有料会員223万人)を有するニコ動を通じて海外に発信する。新持ち株会社の社名は「KADOKAWA・DWANGO」。両社は「それぞれの強みが互いの足りないところを補える関係にある」「それぞれのコンテンツとプラットホーム(情報の提供手段)を組み合わせることができる」と意義を語った。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
1945年に「角川書店」として創業したKADOKAWAは、出版、映画、アニメ、ゲームなどを幅広く手がけています。最近では、ライトノベル「涼宮ハルヒ」シリーズ、映画「テルマエ・ロマエ」、アニメ「艦隊これくしょん~艦これ~」などがヒットしています。
1997年にゲーム関連会社として創業したドワンゴは、国内最大級の総合動画サービスを運営。視聴者がコメントをつけながら投稿動画を見る映像の新しい楽しみ方を生み出しました。合成音声ソフト「初音ミク」が世界に広まったほか、国会や将棋などの生中継、「ニコニコ超動画」などのイベントも人気です。
両社には、ニコニコ動画に投稿された動画をもとにKADOKAWAが小説とマンガにした「カゲロウデイズ」シリーズがヒットした実績もあります。
統合発表会見でKADOKAWAの角川歴彦会長は、両社の補完関係を強調したうえで「21世紀の新しいメディアを作りたい」と語りました。世界に通用する日本のサブカルチャー「クールジャパン」を発信し、グーグル、アップル、アマゾンといった米国勢が支配する世界のIT市場に切り込みたいとの意気込みがにじみました。
出版社、新聞社、テレビ局、映画会社、アニメ制作会社などの古いメディアがもつ膨大なコンテンツを、新興メディアのプラットホームで発信していく――今回の統合を機に、こんな新たなメディアの組み合わせが生まれるかもしれません。新旧メディアの連携・統合をめぐっては、2005年に楽天がTBSの株を大量に取得して統合を申し入れたもののTBS側の反発で取り下げた例があります。最近では、日本テレビが米国の動画配信会社「Hulu(フールー)」の日本向け事業を買収して動画配信に本腰を入れ始めました。朝日新聞社もニュースサイト「ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン」との提携など新興メディアとの連携を進めています。
今日の記事の中で、中村伊知哉・慶応大教授(メディア政策論)は「スマホの普及でコンテンツ事業を取り巻く環境は大きく変化した。今回の一つの歯車の動きが、業界再編のきっかけになる可能性がある」と指摘しました。マスコミ・メディア関係、IT業界志望者は今後の動きに注目してください。こうした業界の面接では、将来のメディアの新しい形や可能性について「あなたの考え」を聞かれます。自由な発想で考えてみましょう。
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