ニュースのポイント
オバマ米大統領が来日し、今日午前中に安倍首相と首脳会談を行いました。午後には共同記者会見を開きます。主要議題の一つが環太平洋経済連携協定(TPP)。でも、最近毎日のように報道されるTPPってそもそも何だっけ? 今日は「TPPの基本のき」です。
今日取り上げるのは、1面トップの「『尖閣に安保適用』明記へ/オバマ氏来日 日米共同文書に/TPP 大筋合意の可能性」と、総合面(2面)の「時時刻刻/日米連携どこまで」です。
記事の内容は――日米首脳会談のあと、両国は尖閣諸島への日米安全保障条約の適用を明記する共同文書を発表する方向。TPPでは互いに譲歩することで両首脳が一致しており、大筋で合意する可能性が出てきた。大筋合意すれば12カ国によるTPP交渉全体に弾みがつき、大きく前進する。
日本が輸入する牛肉については、米国が今の関税38.5%をほぼゼロにするよう求めてきたのに対し、日本は20%前後にとどめたいと主張してきた。日本には牛肉などの関税を守るとした国会決議があり、米国も日本でのシェア拡大をめざす食肉業界からの圧力にさらされている。豚肉では、安い豚肉ほど高い関税がかかる「差額関税制度」を守りたい日本に対し、米国は撤廃を求めてきた。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
昨夜、安倍首相とオバマ氏はミシュラン三つ星の名店、東京・銀座の「すきやばし次郎」ですしをつまみながら意見交換しました。首相がすし屋を選んだ背景には、オバマ氏がすし好きだということに加え、TPPがありました。TPPにおける牛・豚肉の関税問題は首脳会談の焦点の一つ。メーンディッシュが肉の店だと、和牛にするか米国産にするかで悩みますよね。
TPPはTrans-Pacific Partnershipの略。太平洋を囲む国々が、農産品や工業製品を輸入するときにかける税金(関税)を互いになくしたり、人やお金が行き来しやすくしたりするルールをつくって、経済を活発にしようとする枠組みです。もともとはシンガポールなど4カ国の小さな連携でしたが、2010年に米国が、2013年7月に日本も交渉に加わりました。いま交渉に参加しているのは、日米のほかオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、カナダ、メキシコ、チリ、ペルーの計12カ国で、世界の国内総生産(GDP)の4割を占めます。韓国も参加に関心を示しています。TPPでは関税撤廃が原則ですが、一部「例外」が認められ、関税の扱いは2国間で協議します。日本は、交渉を主導する米国に重要農産品の「例外」を先に認めさせてしまえば、ほかの国との関税交渉でも同様な合意が得られると考え、米国との交渉を最優先で進めてきました。
TPPが大きな話題になるのは、日本のさまざまな産業に大きな影響を及ぼすからです。農産品の関税率は農家だけでなく、食品業界、商社、外食産業などにかかわる問題です。このほか、輸出する際の関税が下がれば自動車や電機業界には有利になります。TPPは貿易以外にも、電子商取引のルール、金融サービス、特許など知的財産権の保護や投資……、さまざまな分野の共通ルールづくりもめざしています。下にリンクを貼った朝日新聞デジタルのTPP特集にある「教えて!TPP」の記事などから、志望業界への影響を調べてみましょう。
世界の貿易協定の歴史と日本の農業関連産業のについては、「一色清の世の中ウオッチ」の第8回「TPPも怖くない『食材製造業』の未来」(2013年8月8日)で書いています。こちらも読んでみてください。
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