ニュースのポイント
「生きること、愛すること。隣にいる人は何を見て生きていますか?」。今日の朝日新聞夕刊(東京本社版)2面の映画広告欄に、21日公開の「神様のカルテ2」の宣伝コピーが載りました。実はこのキャッチコピー、みなさんと同じ就活生が「神様のシュウカツ」と題したワークショップイベントでつくったものです。映画を製作した東宝によるユニークな試みを、「今日の朝刊 号外」で報告します。
今日取り上げるのは、夕刊テレビ欄下の映画広告欄(2面)です。
映画の内容は――長野県のある地方都市唯一の総合病院に勤める内科医・栗原一止(いちと)(桜井翔さん)が、治療に明け暮れる日々を送りながら、夫婦の愛を育み、最期を迎える患者に寄り添って悩み成長していく物語の続編。妻(宮崎あおいさん)の出産を心待ちにしながら仕事に追われる一止の病院に、大学時代の同期のエリート進藤辰也(藤原竜也さん)が赴任。しかしかつての情熱は失せ、残業はせず時間外の呼び出しにも応じない辰也を非難する一止は、逆に「立派な医師ってなんだ? お前がいつも病院にいるってことは、家族のそばにいられないってことだ」と問い詰められる。辰也には妻とのある事情が隠されていた。そんなとき、一止の恩師、貫田内科部長(柄本明さん)が院内で倒れる。友とぶつかり、師の最期に直面し、出産を控えた妻とは満足な時間が持てず葛藤する一止に、貫田は自分の命を削って作った「神様のカルテ」を渡して言葉をかける。「それでも希望はある。それは君たちだ」
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
「神様のカルテ2」の新聞広告とプログラム
就活アドバイス
「神様のシュウカツ」は、東宝志望の就活生を集めて、会社や映画の仕事への理解を深めてもらうイベントとして同社の人事部と宣伝部が企画しました。
「働くとは?」「仕事と家族、どちらが大切か?」――これも映画のテーマの一つ。公開が就活シーズンのまっただ中だったことから、これから仕事に向き合う就活生にも考えてほしいと思いついたそうです。もちろん、映画の宣伝としては話題づくりが狙いです。
採用選考とは無関係ですが、東宝の新卒採用にエントリーしWEB適性検査・小論文を通過した4000人に参加を呼びかけたところ1200人が応募。抽選で選ばれた計69人が14日(金)の午後、東京と大阪の2会場で開かれたワークショップに参加しました。まず映画を見て、深川栄洋監督や製作した博報堂DYメディアパートナーズの春名慶プロデューサーらから、映画に込めた思いや宣伝手法についてのレクチャーを受け、その後5~6人ずつのチームごとに頭を突き合わせて新聞広告用のコピーを考えました。簡単な体験型インターンシップといったところでしょうか。東京、大阪の両会場でもっとも優秀だった作品が、実際に朝日新聞の夕刊紙面を飾りました。冒頭に紹介したのは東京紙面のコピー。大阪紙面(15面)を飾ったのは「あなたの帰りを待ってくれているのは誰? あなたが目を背向けているのは誰? 見つめ返してくれるのは誰?」でした。
参加した学生たちは、「映画のコピーがこんなに難しいとは思わなかった!」と言いつつ、「映画を見た直後に監督や製作者の話が聞けるなんて贅沢」「映画製作の流れが理解できた」「広告会社と映画会社をめざしているので、両方のお話が聞けてとても参考になりました」とワークを楽しんだ様子。「17日締め切りのESに今日の話を盛り込みます」という学生も。みな4月からの面接に向けてモチベーションが高まった様子でした。
ちなみに、この映画の製作委員会には朝日新聞社も参加しています。こうした映画にテレビ局だけでなく新聞社が出資するケースも増えています。マスコミをめざすみなさんは、様々なメディアが協力するクロスメディアの事業展開についても調べてみましょう。
最後に映画の個人的な感想を。この映画には先に出たテーマのほかにも、若い2組の夫婦と老夫婦それぞれの愛や信頼の絆、友情、医師不足による医師の過重労働、地域医療や病院経営のあり方、幸せな最期の迎え方、看取り方……など、重い課題がたくさん盛り込まれています。たくさんのことを考えさせられます。でも、いずれにも「正解」はありません。登場人物たちは、それぞれが懸命に取り組んだうえで折り合いをつけていくのです。見終わった後に少し元気になれる、人生捨てたもんじゃないと前向きでさわやかな気持ちにさせてくれる、ほんとにいい映画です。私は、この数年見た中でもっとも涙を流しました。一人でも多くの人がこの映画を見ていろんなことを考えてほしいと思います。
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深川監督らの話を熱心に聞く就活生たち(3月14日、東京の東宝本社)