ニュースのポイント
国の安全保障の情報を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案が国会で審議入りしました。日本の安全のためという触れ込みですが、政府による情報の独占を許し、国民の「知る権利」を狭める内容だとして、反対論が強まっています。すべての国民に関わる問題ですが、「報道・取材の自由」に関わる問題なので、とりわけマスコミをめざす人は国会での論戦から目が離せません。
今日取り上げるのは、1面トップの「拉致・原発警備は特定秘密/秘密保護法案審議入り」と2面の「『知る権利』論戦入り口」です。
記事の内容は――特定秘密保護法案が衆院本会議で審議入りした。安倍首相は「早期成立に努める」と表明。与党は今月中旬にも衆院を通過させ、12月6日までの会期内成立を目指すが、法案には秘密指定の範囲や「知る権利」の保障などあいまいな点が多く、野党との論戦が激しくなりそうだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
◆どうして法案を作ったの?
そもそも、なぜこの法案が提出されたのでしょう。中国の軍事大国化、海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発問題など、北東アジアの安全保障環境が悪化していると言われる中、政府は国家安全保障会議(日本版NSC)と呼ばれる外交・安全保障政策の司令塔をつくることにしました。そこで米国などと機密情報を交換、共有するためには秘密保全の仕組みが必要だとして、この法案を提出しました。
◆法案の内容
大臣ら行政機関の長は、漏れると日本の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある情報を特定秘密に指定する。範囲は防衛、外交、スパイ活動などの特定有害活動の防止、テロ活動の防止の4分野の23項目。指定期間は最長5年だが延長でき、30年を超える場合は内閣の承認が必要。特定秘密の取扱者は公務員、警察職員、契約業者。特定秘密を漏らすと、最長懲役10年。知る権利の保障に資する報道または取材の自由に十分に配慮する。出版、報道の取材行為は、法令違反または著しく不当な方法でない限りは正当とする。
◆問題点
・国民の知る権利、報道・取材の自由については法案に盛り込まれましたが、ある公務員が問題と感じた情報を報道してほしいと思っても、罰則を恐れて萎縮するのは確実です。「著しく不当な方法」による取材行為がどんなものかも不明確です。
・特定秘密は事実上役所の判断で指定され、指定が妥当かどうかを第三者が検証する仕組みがありません。「どんな情報を秘密にしたかも秘密」で、23項目の多くに「その他重要な情報」とのただし書きがあります。指定される情報の範囲がどんどん広がりかねません。
・内閣の承認があれば、事実上、永遠に秘密にできます。情報公開法など現在の情報公開の仕組みも不十分なため、いったん指定されるとチェックのないまま半永久的に隠されるおそれがあります。
◆意見を投稿しよう
朝日新聞デジタルの特定秘密保護法案特集ページには、法案の全文、関連記事、外国の秘密保護制度の一覧表のほか、読者が法案への賛否と100字以内でコメントを書き込める投稿マップもあり、多くの方がコメントしています。就活では多くの場面で自分の意見を求められます。まずは事実を知り、多様な意見に耳を傾けることが自分の意見をもつ第一歩です。みなさんも、他人の意見を知り、自分の考えを投稿してみてください。
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