2013年09月30日

金融志望者必読! NISAは切り札か?

テーマ:経済

ニュースのポイント

 新聞やテレビCMで「NISA(ニーサ)」という言葉をよく見聞きしませんか。若者など個人投資家を増やし預貯金として眠っている個人の金融資金を株などの投資に回すことで経済を活性化しようとする新制度です。アベノミクスの成長戦略の一つで、「貯蓄から投資へ」の切り札ともいわれ、来年1月のスタートを前に証券会社や銀行が個人顧客の激しい争奪戦を展開しています。

 今日取り上げるのは、経済面(4面)の「NISA 若者に照準/100万円以下の投資、5年非課税の制度/銀行・証券、セミナーに熱」です。
 記事の内容は――年100万円までの投資のもうけに税金がかからない「少額投資非課税制度(NISA)」の専用口座を、10月1日から開けるようになる。証券会社や銀行は異例の宣伝攻勢をかけており、NISA紹介のセミナーも盛況で、若い世代の参加も目立つ。非課税期間の5年の間にNISA口座で買った株式や投資信託を売れるのは一度だけ。何度も売買を繰り返す投資には不向きで、気に入った銘柄を長く持ち、手堅い運用でもうけを目指す点が、これまで投資に縁のなかった人向き。野村総合研究所はNISA口座が年内に最大970万件になると予想し、政府が掲げる「2020年までに投資総額25兆円」という目標は「達成は5年以内に可能」とみる。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 「今度、投資始めようと思ってさ」「えっ、投資とか興味あるんだ」
 若い男女がエスカレーターを一緒に降りながら、こんな会話を交わすテレビCMを見た人も多いと思います。SMBC日興証券のNISAの広告です。日本証券業協会のコマーシャルには、CM女王の剛力彩芽さんが出演しています。話題のNISAですから、銀行・証券・保険などの金融業界をめざすみなさんは、今日の紙面で制度の基本的な仕組みやリスクについて勉強してください。でもそれだけでは足りません。今なぜNISAが導入されるのか、背景を知ることも大事です。

 100万円といえば大金ですが、証券業界では「小口」の投資です。それでも金融業界が躍起になっているのは、「これまで株式や投資信託を買ったことのない人を市場に呼び込むチャンス」とみているからです。金融庁担当の寺田稔・内閣府副大臣はNISA導入の狙いを三つ挙げています。
①「個人投資家のすそ野拡大」=バブルの後遺症で投資から身を引いた人たちを呼び戻し、若い世代を中心に新しい層を投資に引き入れる。
②「成長資金の市場への供給拡大」=日本人の個人金融資産は1500兆円にのぼるが、そのほとんどは預貯金という形で眠っていて、株式や投資信託などで直接市場に出回っているのは195兆円。個人金融資産を市場に供給して経済を活性化させる。
③「国際的な潮流を踏まえた投資制度の整備」=個人の投資・資産形成を促進する制度があり、多くの人が利用している欧米にならい、個人投資家のすそ野を広げ、家計の資産形成を促す。

 「政府広報オンライン」にある日米英独仏5カ国の「家計に占める現金・預金の国際比較」のグラフを見てみてください(下記URL)。預貯金の割合は、米国14.5%、英仏が30%ほど、国民性がお堅いといわれるドイツでも40.1%ですが、日本は55.2%と過半数を占めます。逆に米国で過半数を占める株や債券など投資的な項目が日本は13%。日本は「預貯金大国」なんですね。今日の記事では「預貯金は、銀行などを通じて企業への貸し出しに回るため、お金が渡るのは返済確実な安定した企業が中心」とする一方、投資については「伸び盛りの企業や新しい産業にも行き渡る。投資が増えると企業活動が活発になり、成長につながる」と解説しています。政府が長年掲げながら一向に進まなかった「貯蓄から投資へ」が、NISAによって実現するのか、注目です。

 こうしてNISA導入の背景事情から日本経済の現状や構造を知ることは、金融機関で働く意味を考える材料にもなります。

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