2023年01月04日

金利・原発・防衛…政策の大転換期 今年もニュースに敏感に【週間ニュースまとめ12月19日~1月3日】

テーマ:週間ニュースまとめ

 あけましておめでとうございます。正月三が日には社会を騒然とさせるような出来事はなく、比較的穏やかな年明けになったと思います。ただ、昨年末には時代の転換を示す大きな出来事がいくつもありました。ひとつは日本銀行が利上げに動いたことです。安倍政権の経済政策「アベノミクス」が始まった2013年以来、日本の金利は下がり、長く超低金利が続いてきましたが、それが反転したのです。早速、銀行は固定の住宅ローン金利を引き上げました。為替は日米の金利差が縮まるとみて、円高に向かいました。超低金利に下支えされてきた日本経済が変わろうとしています。もうひとつは原子力発電所をめぐる政策です。政府は2011年の東日本大震災による東京電力福島第一原発事故の反省から原発の新増設を否定してきましたが、新増設を認める方針に転換しました。日本のエネルギー政策は脱原発から原発依存に変わろうとしています。ほかにも防衛費を大幅に増額するという政策転換もありました。軽武装の国から中武装あるいは重武装の国に変わろうとしています。こうした政策転換により日本はどんな国になっていくのでしょうか。今年もニュースに敏感になって、社会の変化を読み取るようにしましょう。(ジャーナリスト・一色清)

(写真・東京証券取引所での大納会で鐘をたたく岸田文雄首相=2022年12月30日、東京都中央区)

【経済】日銀が金融緩和を修正、事実上の利上げ 長期金利上限0.5%程度に(12/20.Tue)

 日本銀行は20日、金融政策決定会合を開き、緩和策の一つとして抑えてきた長期金利の上限を、これまでの「0.25%程度」から「0.5%程度」へ引き上げた。2013年春から続けている大規模な金融緩和の修正で、金融市場は事実上の利上げと受け止めている。長期金利は急上昇し、大幅な円高、株安となった。日銀はこれまで、企業の投資や家計の消費を促すため、金利を極端に低く抑える政策を続けてきた。具体的には、長期金利の指標となる10年物国債利回りの上限を「0.25%程度」とし、これを超えないように、市場で国債を買い入れてきた。日銀は今回、この上限を「0.5%程度」に引き上げた。理由について、国債買い入れで長期金利が著しく下がっていることなどで低下した「市場機能の改善」を図るためとしている。
 メガバンク3行は30日、来年1月に適用する住宅ローンの固定金利を引き上げると発表した。日本銀行の金融緩和策の修正で、長期金利が上昇したことにともない、10年固定型を12月の水準から0.18%~0.30%幅引き上げる。一方、各行とも、短期金利の影響を受ける変動金利は据え置いた。10年固定では、三菱UFJ銀行が12月から0.18%幅引き上げ3.70%に、三井住友銀行が0.26%幅引き上げ3.79%に、みずほ銀行は0.30%幅引き上げ3.50%にする。三井住友は2013年10月以来、みずほは2011年11月以来の高水準となる。(12/30.Fri)

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【経済】原発事故後の方針を政府が大転換 新規建設や運転延長で最大限活用(12/22.Thu)

 政府は22日、原発の新規建設や60年以上の運転を認めることなどを盛り込んだ「GX(グリーン・トランスフォーメーション )実現に向けた基本方針案」をとりまとめた。来年に閣議決定する。岸田文雄首相の検討指示から約4カ月で、2011年の東京電力福島第一原発事故後に堅持してきた政府の方針が大転換する。基本方針案では、原発を「最大限活用する」として、大きく二つの政策転換を打ち出した。一つは原発の新規建設だ。政府が「次世代革新炉」と呼ぶ、改良型の原発を想定している。新設や増設についても「検討していく」とした。もう一つは、原発の運転期間の延長だ。原発事故の教訓をもとに原則40年、最長20年延長できると定めたルールを変える。この骨格は維持しつつ、再稼働に必要な原子力規制委員会の審査期間や、運転差し止めの司法判断などで停止した期間を運転期間から除く。

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【経済】政府、歳出総額114兆円の予算を閣議決定 防衛費の増額で過去最大(12/23.Fri)

 政府は23日、一般会計の歳出総額が114兆3812億円となる2023年度当初予算案を閣議決定した。防衛費の歴史的増額により、11年連続で過去最大となった。税収は過去最高を見込むが、建設国債を艦船建造など防衛費に戦後初めて使うなど、借金体質から抜け出せていない。歳出面では前年度当初予算より6兆7848億円増と大幅に伸びた。当初予算の歳出が100兆円を超すのは5年連続。8月末の各省庁の概算要求の総額は110兆円だったが、金額を示さない事項要求が多く、それを上回る異例の額となった。政府はこれまで、戦前に戦時国債で軍事費を拡大した教訓から防衛費には建設国債を認めてこなかったが、歴史的転換となる。

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【社会】特定秘密漏洩容疑で海自1佐を懲戒免職処分 元上司に「畏怖の念」(12/26.Mon)

安全保障に関わる機密情報の「特定秘密」を漏洩(ろうえい)したとして、自衛隊の捜査機関にあたる警務隊は26日、海上自衛隊幹部学校に所属する井上高志・1等海佐(54)を特定秘密保護法違反と自衛隊法違反の疑いで書類送検したうえで、懲戒免職処分としたと発表した。同法違反での摘発は初めて。井上1佐とは別の現職隊員1人とOB2人の計3人も、注意義務違反や指揮監督義務違反で停職や減給相当などの処分とした。発表によると、井上1佐は情報業務群司令を務めていた2020年3月19日、かつての上司で自衛艦隊司令官を務めて退職していた元海将に安全保障情勢に関するブリーフィングをした際、周辺情勢について収集した情報といった特定秘密のほか、自衛隊の運用状況、自衛隊訓練に関する情報といった秘密を故意に伝えた疑いがある。この当日、防衛省に対して秘密情報を漏らした可能性があるとの情報提供があり、同省が内部調査を開始。内部調査に対し、井上1佐は漏洩を認めたという。特定秘密は安全保障に関する情報のうち、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野で、特に秘匿することが必要であるものについて、2014年施行の特定秘密保護法に基づいて政府が指定。情報を扱えるのは適性評価をクリアした人のみで、情報を漏洩させた場合には懲役10年以下の罰則が科される。漏らすように働きかけた民間人らにも懲役5年以下の罰則がある。

【国際】中国、1月8日から入国者の隔離措置撤廃 「ゼロコロナ」政策終了へ (12/27.Tue)

 中国政府は26日夜、新型コロナウイルスの水際対策として入国者に義務づけてきた隔離を撤廃すると発表した。2023年1月8日から実施する。国内の断続的な規制緩和に加えて出入国時の制約もほぼなくなる形で、国民に厳しい移動制限を強いてきた「ゼロコロナ」政策は事実上、終了となる。中国政府はこれまで、入国者に対してホテルなど指定の施設で5日間、さらに自宅などで3日間の計8日間の隔離を義務づけてきたが、すべて廃止する。一方で、搭乗前の48時間以内に受けたPCR検査の陰性証明の提示は、引き続き必要だとしている。発表では、中国への訪問を希望する外国人に対して「仕事の再開、商用、留学などのビザの提供を進める」とされた。中国人の海外旅行も国際的な感染状況などに基づき、順次再開するという。

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