2018年03月30日

公文書改ざん問題、ポイントだけは押さえよう!【今週のイチ押しニュース】

テーマ:政治

 財務省による公文書の改ざん問題で27日、当時担当していた佐川宣寿(のぶひさ)・前理財局長(写真)の証人喚問が国会で行われました。ニュースで見た人も多いと思いますが、佐川氏は「刑事訴追を受けるおそれがあるので、答弁を差し控えたい」として、改ざんの経緯についてほとんどの証言を拒否し、真相は明らかになりませんでした。民主主義を揺るがしかねない大問題ですから、どこで話題に出ないとも限りません。マスコミ志望でない人も、ポイントだけは押さえて、自分の意見を言えるようにしておきましょう。(編集長・木之本敬介)

そもそも森友問題って?

 まずは、根幹の森友問題をおさらいします。大阪市の森友学園が計画していた小学校建設用地として、財務省が2016年、大阪府豊中市の国有地を鑑定価格から8億1900万円値引きし、1億3400万円で売却した問題です。名誉校長に安倍首相の妻・昭恵氏が就いていました。野党は、学園への特例的な扱いの背景には首相や昭恵夫人の存在があり、官邸などからの指示や忖度(そんたく)があったのではないかと追及しましたが、国は「適正に算定した」としてきました。大阪地検は国や大阪府・市からの補助金を詐取したとして、学園の籠池泰典(かごいけやすのり)前理事長(写真)と妻を詐欺罪などで起訴し、売却の経緯なども調べています。

改ざんの経緯と問題点

 2017年2月に格安の国有地売却が明らかになってから、国会ではその経緯を巡る議論が続いてきました。首相は「私や妻が関係していたということになれば首相も国会議員も辞める」と答弁。当時、理財局長だった佐川氏は、売却をめぐる学園との交渉記録は「廃棄した」と繰り返し、政治家の関与は一切なく、適正な取引だったと強調してきました。

 ところが、今月初め、財務省が国有地取引の際に作成した決済文書を書き換えていた疑惑を朝日新聞がスクープすると、財務省は14の文書を書き換えていたことを明らかにしました。昭恵夫人(写真)や複数の政治家の名前が登場するくだりをすべて削除するなど、佐川氏の答弁に合うように改ざんしていたと認めたのです。

 民主主義は、立法・行政・司法の三権分立で成り立っていますが、公文書の改ざんはこれを揺るがしかねない大問題です。公文書は行政の政策決定が正しかったのかどうか、後からチェックするために欠かせません。しかしこの1年、ウソの文書をもとに国会審議が行われてきたのです。これでは国会が政府を監視することができません。国会は私たち国民の代表です。国民がだまされたという重大問題なんです。

謝罪はするけど証言は拒否

 なぜ改ざんしたのか、誰が誰の指示でやったのか、そもそもなぜウソの答弁をしなければならなかったのか。真相を明らかにしようと、国会は当時の責任者である佐川氏を証人として呼びました。証人喚問はウソの証言をすると3カ月以上、10年以下の懲役に処せられる重い制度です。ただ、証言する内容によって罪に問われる恐れがある場合は証言を拒否できます。大阪地検特捜部は、国有地が不当に安く売却された疑いがあるとする背任容疑や証拠隠滅公用文書等毀棄(きき)容疑の告発を受けて今捜査しています。このため、佐川氏は「当時の担当局長として責任はひとえに私にある」と謝罪しながらも、核心についてはほとんど証言を拒否したわけです。

「官邸関係ないが、真相は言えない」

 一方で佐川氏は、改ざんに安倍首相(写真)や麻生財務相、首相官邸の関係者、財務省幹部らの指示はなかったと断言。国有地の取引についても、首相や昭恵夫人の「影響があったとは全く考えていない」と言い切りました。これを受けて、政府・与党は事態を収束させようとしています。

 しかし、「首相や官邸は関係ないが、誰がやったかは言えない」という理屈です。官邸などの関与がなかったことを示すには、誰がなぜ行ったのかを明らかにしなければ、誰も納得しません。そこは大阪地検の捜査次第というのが政府・与党の姿勢ですが、野党は佐川氏一人の責任ということにする「トカゲのしっぽ切り」だと反発し、自民党内からも批判の声が出ています。

カギは内閣支持率急落と総裁選

 今後どう展開するのでしょう? 野党は昭恵夫人らの国会招致を求めていますが、与党は拒否。大阪地検の捜査がいつまでかかるのかはわかりません。カギを握るのは世論です。改ざん問題が発覚してから、安倍内閣の支持率は急落しました(グラフは朝日新聞の調査)。今年9月には自民党総裁選があります。ちょっと前までは安倍首相が無風で3回目の当選を果たして続投との見方が大勢でしたが、どうなるかわからなくなってきました。

 党内外に影響力がある小泉進次郎・筆頭副幹事長は26日の自民党大会の後、「平成の政治史に残る大きな事件と向き合っている。権力は絶対に腐敗する。新しい空気を入れたり、謙虚さを失わないようにしたり、そういったことすべてが問われる」と、記者団に語っています。今後に注目してください。

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