ニュースのポイント
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「石炭火力 新設を断念/東燃・関電、採算を不安視/東日本大震災後初、CO₂排出 経営リスク」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
(写真は、宮城県仙台港に建設中の石炭火力発電所)
ただ、ここにきて、火力発電所の発電量はそんなに増えないという予測が出ています。アメリカの研究機関は今月、電力需要の減少と再生可能エネルギーの伸びで、2030年に日本国内の火力発電所の発電量は15年比で4割減るとの分析を発表しました。中でも石炭火力は、地球温暖化問題による規制の強化も考えられるため、現在計画されている40基余りの石炭火力発電所の多くは建設されないと予測しました。また、原子力のシェアも政府の見通しの半分以下にとどまるとしています。
石炭火力の建設計画がこんなに多いのは、「コストが安い」とされているためです。資源エネルギー庁の試算では、原子力が最も安いとされていますが、その次が石炭火力でLNG火力、風力、石油火力、太陽光の順になっています。原子力の再稼働がなかなか進まず、電力の自由化で新規参入が増えていることから、安い石炭火力発電所を作る計画が目白押しとなっているわけです。
しかし、石炭は、CO₂をたくさん出します。最新型の石炭火力でも、LNG火力の2倍のCO₂が出てしまいます。まして、再生可能エネルギーに比べると、何十倍もCO₂を出すことになります。地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」で日本も温室効果ガスの大幅削減を求められています。排出量取引や炭素税など排出に費用がかかる制度の導入も目指しています。こうなると、石炭火力は割に合わない発電になりますし、このまますべての石炭火力発電所が建設されれば日本は温室効果ガスの削減目標を達成できなくなります。このため、建設中止の決断が出始めているのです。
ビジネスは未来を予測することがとても重要です。電力会社であれば、エネルギーの源となる資源の量や価格はどうなる、環境問題はどうなる、電気の需要はどうなる、人々の意識はどうなる、社会はどうなる、といったことを考え、分析し、今からできることがあれば手を打つことです。電力以外のことも考える余裕と力があれば、新しい分野に進出して成功することができるかもしれません。こうした未来予測はすべてのビジネスに通じることです。一人前のビジネスパーソンになるためには、社会へのアンテナを張って常に未来はどうなると考える姿勢を持つことが必要です。
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2025/04/02 更新
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