ニュースのポイント
朝日新聞の経済面には企業ニュースが連日載りますが、月曜日にほぼ毎週掲載している「カイシャの進化」は時代の変化に合わせて変わろうとしている企業を紹介しています。こうした企業ストーリーからは、会社の歴史や今の姿、これから目指す未来を知ることができるだけでなく、トップや幹部の発言、社員の取り組みなどから社風も感じ取ることができます。企業研究に役立ててください。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、特集面(31面)の「もっと!朝日新聞デジタル/デジタル限定 経営者インタビュー 会見生中継も」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
企業ストーリーを読もう
今日の記事で紹介しているのが、「カイシャの進化」です。「今日の朝刊」の月曜日は週刊ニュースまとめ「ニュース★あらもーど」をお届けしているため、この欄で紹介したことはありませんが、悪戦苦闘しながら変わろうとする会社の実像に迫る企画です。過去の記事は、朝日新聞デジタルの有料会員になれば全文読めますが、今年登場した企業ストーリーの概略をいくつか紹介します。
(写真は、すかいらーくグループが展開する「むさしの森珈琲」富山経堂店 )
ニーズの多様化に対応する「すかいらーく」の挑戦
2000年代に「ガスト」、和食「夢庵」、中華「バーミヤン」を大量出店したものの経営体質が悪化。グループ店舗を4000店から3000店に縮小させた。消費者ニーズの多様化に対応するため、しゃぶしゃぶの「しゃぶ葉」、焼き肉の「じゅうじゅうカルビ」、「ステーキガスト」、とんかつとから揚げの「とんから亭」、おしゃれなカフェ「むさしの森珈琲」など、20超の専門ブランド路線に。利用者履歴のビッグデータを販促やメニュー開発に生かす。店作りでは、1人や2人での客が増える傾向を受けて家族向けテーブルを縮小して2人席を増やすなど客のニーズへの細かな対応を積み上げる。
人材確保では、アルバイト学生を積極的に採用。担当者は「楽しさも、大変さも知っているアルバイト経験者は即戦力。離職率も低い」と言い、新卒採用のうちアルバイト経験者を8割にする考えだ。
海外鉄道重視にかじを切った「日立製作所」
2008年のリーマン・ショックまで鉄道事業は国内だけで海外は視野になかったが、2009年に7873億円という史上最悪の純損益を計上したのを機に、市場が縮む国内より海外を重視する経営にかじを切った。2014年に鉄道部門を束ねる機能を英ロンドンに移転。2015年に、ロンドンの中心を縦断する期間路線の運行管理システムを受注した。国内が主力なら千数百億円が限界の売上高が、海外に注力することで2018年には6400億円まで伸ばせる見通し。日立の稼ぎ頭になる可能性も。
農業、医療で総合商社型めざす「鹿児島銀行」
農業を「成長分野」と位置づけ、農業法人「春一番」を立ち上げた。行員が社長になって農作業をしている。付加価値の高い野菜を出荷し、農地を広げ、5年後には黒字化を目指す。まずは野菜販売の実績を積んでブランドを確立し、県内の農家が生産した野菜を買って春一番ブランドで出荷。農家との関係を深めて、農業の運転資金や設備資金と言った融資に加え、住宅ローンやカーローンなどの資金需要の開拓につなげる狙い。
医療介護分野でも、医療機関の医師数や病床数、理事長の年齢などデータを管理する医療機関の独自システム「トロボメディカル」を開発。このデータと分析をもって医療機関を訪問して営業。医療介護業への融資残高は2016年3月末時点で約2750億円。法人向け貸し出しの約2割を占め、3年前より3割以上増えた。
上村基宏頭取は「銀行は総合商社のような形になるのが理想」と語る。
バリューバ-トナーに変身する「NTT」
従来、電話のような電気通信網、インターネットのような情報通信網の提供業者だったが、21世紀に入って通信網の提供だけでは付加価値を得られなくなった。自前の技術と取引先の持つ技術や知恵とを組み合わせ、一緒に新しい価値をつくってユーザーに届ける事業モデルに転換。「プロバイダーからバリューパートナーへ」企業体質を変えようとしている。服を着たまま心拍数や心電、筋電を測れる「hitoe」の開発は、社内外の知恵を総動員して新しい価値を生み出す「オープンイノベーション」の典型例だ。連結売上高11兆円の巨大企業にとってはまだ小さな取り組みだが、新しい市場づくりと普及を狙う。
NTTグループと「異質なパートナー」との主なコラボ事例は以下のとおり。
<東レ>hitoeの開発と実用化
<ゴールドウイン>hitoeを使ったスポーツウェア
<大林組>hitoeを使った建設作業員の健康管理
<楽天野球団>
バーチャルリアリティー(VR)を使ったトレーニング装置
<松竹>IT技術を活用した歌舞伎の新しい演出方法
<第一興商>音声認識によるカラオケ楽曲の検索
<ファナック>製造現場を最適化するIoTシステム
<クボタ>新しい農業支援システムの開発
<三菱重工業>制御システム向けサイバーセキュリティー技術
(写真は、NTTの「hitoe」開発チーム)
企業トップのことばにも注目
このほか、2016年9月の企画スタートから取り上げた企業は以下のとおりです。
トヨタ自動車、鴻海(ホンハイ)精密工業、ゼネラル・エレクトリック(GE)、カルビー、NEC米沢事業場、三井住友銀行、ソフトバンクグループ、星野リゾート、YKK、三菱地所、日本電産、ニトリ、三菱電機、虎屋、LINE
社長など企業トップのことばもたくさん登場します。興味のある業界、企業の記事は必読です。
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