ニュースのポイント
トランプ米次期大統領(写真)の選挙後初の記者会見を受け、12日の東京市場では株価が大きく値下がりしました。
為替は円高が進みました。
トランプ氏が大統領選で勝利した後、減税やインフラ投資でアメリカの景気がよくなるのではという思惑から、アメリカや日本の株価が上がり、為替は円安ドル高が進んでいました。しかし、トランプ氏は記者会見で経済政策の具体策を打ち出さず、
保護主義的な発言が目立ったため、株やドルが
失望売りされたようです。
株や為替や金利は、経済の現状と先行きを示す大事な指標です。今の株価、円相場、金利がだいたいいくらくらいなのか、チェックするようにしましょう。就活の面接などで経済の話題が出ても怖くなくなると思います。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「トランプ相場に陰り 東証一時290円超下落 円高進む 『膨らみきった期待感に穴』 保護主義に懸念」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
株価の指標って何?
見出しにある「290円超下落」というのは、何が下落したのか、分かりますか。これは日経平均株価が下落したのです。日経平均株価というのは、
東京証券取引所第1部の中から225銘柄を選んで加重平均した株価です。戦後まもなくから株価の指標となっています。日本経済新聞社が権利を持って計算しています。指標としては、証券取引所が計算している
東証株価指数(TOPIX)もあります。こちらは1部上場全銘柄の平均です。ただ、歴史の長い日経平均の方がよく使われています。株価が上がった下がったというのは、この日経平均が上がった下がったということで、個別の株価の上がり下がりとは別です。
(写真は、トランプ氏会見の影響で株安・円高になった金融機関の電光掲示板の様子です)
円高は、本当はドル安
トランプ氏の記者会見で、どうして株価や為替が動いたのでしょう。まず、なぜ円高ドル安になったのかを考えましょう。考えないといけないのは、それは円高なのかドル安なのかということです。つまり、「円が買われたから」円高ドル安になったのか、「ドルが売られたから」円高ドル安になったのか、の見極めです。
トランプ氏の会見では、日本の名前は2カ所で出ました。1カ所は、「貿易不均衡が大きい」と名指しした国々の中に登場し、もうひとつは「これからもっとアメリカに敬意を払うようになるだろう」と名指しした国々の中に登場しました。しかし、日本が取り立てて攻撃された印象はありません。会見全体から受ける印象は、トランプ氏は現実的になっておらず、選挙期間中と同じ保護貿易主義的な発言を繰り返したというものです。そこからは、アメリカの経済は期待のようにはよくならないのではないかという予想が芽生えます。となると、ドルよりもよその国の通貨を持っていた方が得だという連想が働き、ドルを売る動きとなったわけです。つまり、今回の円高ドル安は「ドル売り」の結果だと思います。
円安は買い、円高は売りの公式
株価が下がったのも同じ連想です。トランプ氏の会見で減税やインフラ投資への具体策が出なかったため、期待したほど経済はよくならないのではないかと思った投資家がアメリカ株を売ったため、ニューヨーク市場の株価が下がりました。日本はそれを受けて、円高になると輸出企業の業績が悪くなるという連想も加わり株が売られたわけです。今の日本の株式市場では、円安なら買い、円高なら売りという公式が定着していることも覚えておきましょう。
円高・株安・金利安のセット?
経済を見る指標としては、もう一つ金利があります。一般的に景気がよくなると、金利はあとを追って徐々に上がり、景気が悪くなると、金利はあとを追って徐々に下がります。ですから、今の日本では、「円安・株高・金利高」がセットで、逆の「円高・株安・金利安」もセットで訪れることが一般的です。このままトランプ氏への期待が失われていくと、現在上昇中のアメリカの金利も上がらなくなり、日本は「円高・株安・金利安」になる可能性が高くなります。
根気よく経済指標と付き合おう
株・為替・金利といった経済の指標は、大学生にはとっつきにくいかもしれません。でも、新聞には毎日のように株・為替・金利のニュースが出ています。1日で理解できなくても根気よくそうしたニュースに接していれば、必ず理解できるようになります。そうなってくると、経済は面白いと思えるようになります。面接などで経済の話題が出ても、しどろもどろになることもなくなります。
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