2017年01月05日

「円安・株高」でスタートしたが…「基本のき」でおさらい

テーマ:経済

ニュースのポイント

 2017年の円相場と株価は、「円安・株高」で始まりました。日経平均株価は2015年8月以来の2万円台に迫っています。円安・株高は、輸出でもうける企業が多い日本経済にとって一般的にはプラスです。米国のトランプ次期大統領の政策への期待による「トランプ相場」と言われていますが、先行きは見通せません。この機会に円安・株高を「基本のき」からおさらいしておきましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(7面)「東証479円高 2万円に迫る/大発会/4年ぶり上昇 米景気期待」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
(写真は、東京証券取引所の「大発会」に晴れ着姿で参加した証券会社などの関係者)

大納会と大発会

 東京証券取引所(東証)では、4日が「大発会(だいはっかい)」と呼ばれる年初最初の取引日でした。代表的な指標である日経平均株価の終値は1万9594円16銭で、昨年最後の取引日「大納会(だいのうかい)」より479円79銭上がりました。2015年12月7日以来、約1年1カ月ぶりの高値。大発会の日に値上がりしたのは4年ぶりです。

 東京外国為替市場の円相場は円安ドル高になり、午後5時時点で1ドル=117円98銭~118円00銭でした。
(写真は「大発会」後、取引が始まった東証)

円安になると…企業への影響は

 円安・株高が日本の企業にどんな影響を与えるのか、基本を復習します。
 日本企業が国内では100万円で売っている自動車を米国に輸出したとします(かなり安い車ですが、分かりやすい数字で考えます)。1ドル=100円のときは1万ドルで売っていましたが、円の価値が下がって1ドル=125円の円安になると8000ドルで売ることができます。米国の消費者にとってはお得になるので車は以前よりたくさん売れて、日本企業の業績は伸びます。逆に円高になれば、日本の輸出車は米国では割高になるため、売り上げが減る理屈です。

 日本には輸入でもうけている会社もありますが、自動車や電機メーカーなど輸出でもうける企業のほうが多いため、円安になると日本企業全体の業績はアップします。企業の業績がアップすると、その会社の株を買いたい人が多くなるので、株価が上がります。これが「円安・株高」の基本的な仕組みです。

なぜ円安、円高に?

 では、どうして円安や円高になるのでしょう。円相場は世界の政治・経済情勢で大きく変動します。日本は国債を中心とする国の借金が1000兆円を超す借金大国ですが、大半が金融機関など国内での貸し借りのため、もし日本の経済が急激に悪化してもみんなが国債を売り払って価値が急落するような事態にはならないのでは、と思われています。このため、世界の通貨の中では比較的「安全」な通貨とされ、世界の政治や経済が不安定になると円を買う人が多くなり、円高になる傾向があります。一方で、米国の景気が拡大するとドルの価値が上がるため、相対的に円安になります。

ここに注目!

 ここまでの基本を押さえたうえで、今年の経済を考えます。表は今年の経済がどうなるかの専門家の予想です。人によってバラバラですね。経済の見通しはそれくらい難しいわけですが、注目すべき点をあげてみましょう。

トランプ次期米大統領による大型減税や規制緩和、公共事業拡大→米国の景気拡大で【円安・株高】?
トランプ氏が掲げる「米国第一」で保護貿易政策を強める→世界の貿易が停滞し【円高・株安】?
英国の欧州連合(EU)離脱交渉→欧州政治の混乱で【円高・株安】?
相次ぐ欧州の選挙(オランダ総選挙、フランス大統領選挙、ドイツ連邦議会選挙)→結果次第では欧州政治混乱やEU離脱の動きで【円高・株安】?
米国の金利政策→金利上昇が続きドル高になると【円安・株高】? 金利上昇で米国経済に悪影響が出ると【円高・株安】?

 トランプ相場については、「円安株高なぜ? 『トランプ相場』って?」(2016年12月15日の今日の朝刊)でも書きました。こちらも読んでください。

 トランプ氏の政策やEUの動向が円相場や株価にどう影響するのかの理屈がわかっていると、日々のニュースが面白くなってきます。就活では、短期的な相場を気にしすぎることはありませんが、あらゆる業界・企業の業績を左右します。今後のOB・OG訪問や面接でもきっと話題になります。これからの動きに注目してください。

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