2016年09月13日

知名度の「リッツ」VS.国産「ルヴァン」…ブランド力を考えよう

テーマ:経済

ニュースのポイント

 人気クラッカー「リッツ」(写真上)の製造販売元が9月から変わりました。日本では長年、山崎製パンの子会社ヤマザキナビスコ(現ヤマザキビスケット=YBC)が製造販売してきましたが、商標をもつ米モンデリーズ・インターナショナルとの契約が8月末で切れたためです。新たにモンデリーズ日本法人が引き継いで販売したのに対し、ヤマザキは新ブランドのクラッカー「ルヴァン」(写真下)を売り出しました。「リッツ」対「ルヴァン」の構図から、「ブランドの力」について考えます。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(6面)の「リッツVS.後継品 クラッカーの陣/ヤマザキが『ルヴァン』投入」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

リッツは海外産、ルヴァンは国産

 モンデリーズ日本法人は12日、「リッツ」に加え、クッキー「オレオ」、クラッカー「プレミアム」を新たに売り出しました。
 日本では、リッツは45年間、オレオは29年間にわたりヤマザキナビスコが製造販売するロングセラー商品でした。しかしモンデリーズがこれらを自社で製造販売する方針に転換。8月末でライセンス契約が切れ、ヤマザキナビスコによるリッツやオレオの生産は終わりました。
 モンデリーズが売り出したリッツやオレオは、おなじみのパッケージをほぼ引き継ぎました。ただ、リッツはインドネシア、オレオは中国、プレミアムはイタリアの工場で製造して輸入しています。味は「日本人が好む味」(同社)に改良。世界で培った製品開発力や営業戦略で事業拡大をめざします。

知名度か、味・産地か

 これに対し、ヤマザキビスケットは5日、「ルヴァン」を発売。名前もパッケージもリッツとはがらりと変えましたが、リッツを作っていた茨城県の工場で製造し、味も「ほぼ以前のリッツ」(流通関係者)とのこと。同社のホームページを見ると、「ヤマザキビスケット製品は、日本国内で製造しています」「国産」との表示があり、国産の安心感を強調しているようです。

 モンデリーズは、リッツのテレビCMに俳優の長谷川博己さん、オレオには大森南朋さんを起用。対するヤマザキは、長年、旧リッツのCMに出演してきた沢口靖子さんをルヴァンのCMにも起用します。Jリーグの冠大会「ヤマザキナビスコカップ」は「YBC ルヴァンカップ」に変えて知名度アップを狙います。

 圧倒的な知名度がありながら味を変えた「リッツ」と、リッツの味を引き継いだ国産の「ルヴァン」。それぞれ、どんな売り上げを記録するのか。ブランド力、知名度、味、生産地、販売力など様々な要素が絡むこれからの戦いに注目です。(写真は、スーパーの特設コーナーに並ぶ「ルヴァン」=東京都内)

海外ブランド頼みにはリスクも

 海外ブランドをめぐっては最近、アパレル業界でも、英国の「バーバリー」が話題になりました。40年以上にわたりバーバリーを国内で売ってきたアパレル大手の三陽商会。国内ライセンス契約が昨夏に切れて以来、苦境に陥っています。後継ブランドとして「マッキントッシュ ロンドン」などを投入したものの苦戦中。年間売上高の半分を占める稼ぎ頭を失ったのですから無理もありません。バ-バーリーの英国本社が、より高級な自社製造商品に統一してブランド価値を高める戦略に転換したのが発端です。

 日本企業にとって知名度のある海外ブランドのライセンス生産は魅力ですが、本国の企業の方針が突然変わることもあります。志望する企業については、海外ブランドに依存しすぎていないか、調べてみることをお勧めします。(写真は「マッキントッシュ ロンドン」のコート=東京都内)

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