ニュースのポイント
英国が欧州連合(EU)を離脱すると世界経済に大きなインパクトを与えると昨日書きましたが、そうなるとみなさんの就活戦線にも大きく影響します。どうしてそんなことになるのでしょうか。やさしく解説します。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、1面の「英EU離脱警戒/円高・株582円安」です。経済面(7面)には「英の動向 日本企業懸念/EU離脱なら『影響計り知れぬ』」も載っています。
記事の内容は――英国のEU離脱への懸念が世界の金融市場を揺らしている。13日の東京株式市場では
日経平均株価が582円も下落し、約2カ月ぶりの安値の1万6019円18銭。
外国為替市場では「安全資産」の円が買われ、約1カ月ぶりに一時1ドル=105円台後半の円高ドル安水準となった。株安や円高が進むのは、23日の英国でのEU離脱を巡る国民投票を前に、離脱派と残留派が拮抗(きっこう)し、世界経済が混乱するリスクが高まっているためだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
英国の世論調査では当初は残留派が優位でしたが、最近になって離脱派がリードしているという世論調査結果が発表されて、「英国が本当にEUを離脱するかもしれない」という心配から、世界の経済が混乱し始めました。今日の日経平均株価は午前中さらに値下がりし1万6000円を割りました。
ポイントを整理します。
◆英国とEUの関係、なぜ離脱論?
歴史的に米国との結びつきが強い英国は、第2次世界大戦後にフランスとドイツの主導でつくられたEUには遅れて加盟。EUの共通通貨ユーロを導入せず今でも独自通貨のポンドを使い、EU加盟国間で自由な人の往来を認める「
シェンゲン協定」にも参加していない。
それでも近年、東欧のEU新規加盟国などからの移民が増えて、職を奪われる不安や住宅不足、無料の国民保健サービスを圧迫するとの懸念から離脱論が高まった。「国家の主権を取り戻せ」との主張も。キャメロン首相は2015年総選挙で国民投票実施を公約にした。
◆英国の経済成長鈍る?
英国はEU内でドイツに次ぐ経済大国で、輸出はEU向けがほぼ半分を占める。残留派は離脱すればEU貿易にかかわる300万人の雇用に影響し経済成長が鈍ると主張。EUでは一国で許可を取ればほかの国でも自由に営業できる。このためロンドンは約250の外国銀行が拠点を置く世界の金融センターになった。離脱すれば本社機能を他国に移す銀行も出るとみられる。一方で離脱派は、EUの官僚主義や規制がなくなって英企業が成長できると反論する。
◆日本経済への影響(みずほ総合研究所の試算によるシナリオ=7面の記事から)
英国がEU離脱→世界経済の先行き不安高まる→「安全資産」の円が買われて対ドルで2~6円の円高が進む可能性(今の1ドル106円前後が1ドル100円前後に)→円高になると輸出コストが上がって輸出企業の業績が悪くなる→日経平均株価は1000円~3000円下がる可能性→混乱が続くと日本の国内総生産(GDP)は0.1~0.8%押し下げられて消費者物価も0.1%ほど下落する
◆英国に拠点を置く日本企業(7面の記事から)
経団連の榊原定征会長が「日本からは1000社超の企業が(英国で)事業展開している。計り知れない影響が出る」と懸念するように、ヨーロッパの拠点を英国に置く日本企業は多い。
日立製作所は昨年稼働した鉄道組み立て工場からEU向けに売り込む考え。
富士通もITサービスの拠点を英国に置き欧州全体にサービスを展開している。
日産自動車は英国で年約48万台を生産して多くをEU向けに輸出しており、離脱でEUへの輸出関税が見直されたら大きな影響を受ける。
三菱地所はロンドンの一等地に約370億円をかけてオフィスビルを建てたばかりで、不動産市況を気にしている。
世界はつながっています。英国のEU離脱でこれらの企業の業績が悪化すれば、2018年の新卒採用数を減らすかもしれません。英国や欧州での事業展開について知っておくことも大事な企業研究です。まずは23日の国民投票に注目です。
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