ニュースのポイント
米国の大統領選挙は、民主党のクリントン氏(68)と共和党の実業家トランプ氏(69)による対決の構図が決まりました。唯一の超大国のトップ選びです。どちらが選ばれるかは世界の政治・経済の行方を左右し、ひいてはみなさんの就活にも影響します。2人はどんな人なのか、争点は何か、基本的な構図をわかりやすく解説します。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、1面の「クリントン氏vs.トランプ氏/米大統領選 構図確定」です。1面「天声人語」、総合面(2面)「弱点共通」、国際面(8面)「キャリアも手法も好対照」、同「冷めた米国 『内向き』の空気」、オピニオン面(12面)の社説「クリントン氏/苦戦の教訓学んでこそ」も関連記事です。
記事の内容は――米大統領選で7日、民主党のクリントン前国務長官が党の指名獲得を確実にして勝利宣言した。米国で初めて主要政党で女性が指名候補となる。サンダース上院議員(74)は選挙戦継続を宣言したが、11月の本選に向け、クリントン氏と共和党のトランプ氏の対決が確定した。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
今日の各面の記事からポイントを整理します。(C)はクリントン氏、(T)はトランプ氏。
◆どんな人?(
表「クリントン氏とトランプ氏はこんな人」参照)
ともに第2次世界大戦直後に生まれた「
ベビーブーマー」の白人で、ニューヨークに拠点を置き、抜群の知名度を誇る。
(C)夫は1993年から8年間大統領を務めたビル・クリントン氏。弁護士出身で、夫のアーカンソー州知事時代から政策に関わり、上院議員、オバマ政権の国務長官(他国の外相)を歴任。2008年大統領選で立候補を表明したが、民主党の候補者選びでオバマ氏に敗れた。
(T)父から不動産業を継ぎ、カジノやホテルを経営して「不動産王」として有名に。テレビ番組出演でさらに知名度を高めた。「政治経験のなさ」を売りにしている。
◆政策は?(主な政策は
表「両候補者の支持率と主な政策」参照)
(C)従来の米国の同盟関係を維持。国務長官時代に推進した
環太平洋経済連携協定(TPP)は「抜け穴が多い」と反対に転換した。
(T)「米国第一」を掲げる。日本、韓国の米軍駐留経費の負担増を求め、両国の核兵器保有を認める可能性を示唆するなど、米国の戦後外交の根幹を見直す方針。貿易では
北米自由貿易協定(NAFTA)やTPPに反対。中国やメキシコの製品が米国の雇用を奪っているとして35~45%の関税をかけることを提唱、従来の共和党の自由貿易主義に反対し、移民排斥のため「メキシコとの国境に壁を建設する」と繰り返す。「地球温暖化はでっち上げ」と主張し、昨年締結された「パリ協定」(2015年12月15日今日の朝刊「歴史的合意!温暖化対策「パリ協定」のポイントとビジネスチャンス」参照)を破棄するとしている。
◆対照的な支持層
(C)黒人やヒスパニックなどのマイノリティー、女性を中心とした高齢者の支持が厚い一方、若者や無党派層、白人男性の支持率は低い。
(T)従来の共和党路線に不満をもつ白人や、学歴が高くない低・中所得層の白人が支持。不法移民やイスラム教徒などへの排斥主義的な発言、女性蔑視発言でマイノリティーや女性の支持率は低い。
◆「嫌われ者」同士の戦い?
米世論調査で「好感が持てない」人がいずれも5割超。両氏とも熱烈な支持層はいるが、それ以外の人たちの好感度は大統領候補としては異例なほど低い。
(C)クリントン氏は国務長官時代に公務で私用メールアドレスを使った問題や、夫が立ち上げたクリントン財団への外国からの寄付をめぐる問題などで「信用できない」との印象がつきまとう。
(T)「トランプ大学」が詐欺疑惑で訴訟沙汰になっているうえ、審理しているメキシコ系の連邦地裁判事は訴訟から外れるべきだと主張し非難されている。過去の候補が明らかにしてきた納税申告書の公表も拒否している。
◆どっちが勝つの?
数カ月前までは両氏の対決ならクリントン氏の圧勝とみられていたが、今は世論調査の支持率で競り合っている。
米国では、貧富の格差が拡大し、民族間の分断が強まっているといわれています。「嫌われ者」が両党の候補者に選ばれたのも、この「分裂」「分断」の象徴といえるのかもしれません。11月の本選までの5カ月間、米大統領選のニュースを通じて、米国だけでなく、世界の様々な問題について考えてみてください。
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